ウナギ (Unagi (eel))

ウナギ(鰻、うなぎ)は、ウナギ目ウナギ科 Anguillidae に属する魚の総称。
その内の一種 Anguilla japonica (英名:enJapanese eel)を指す。
これをウナギ属 Anguilla に属する他の魚と区別してニホンウナギと呼ぶこともある。

蒲焼や鰻丼などの調理方法が考案されている。
古くから日本の食文化に深い関わりを持つ魚である。
しかし川と海を行き来(回遊)し、ある程度地上を這って移動するなど、その生態は意外と知られていない。
また研究者の間でも、近年まで産卵場すら正確には把握されておらず(2006年にスルガ海山と判明)、ウナギの詳しい生態に関してはまだ謎の部分が多い。

形態
成魚は全長1m、最大で1.3 m ほどになる。
細長い体形で、体の断面は円形である。
目は丸く、口は大きい。
体表は粘膜に覆われぬるぬるしているが、皮下に小さな鱗をもつ。
腹鰭はなく、背びれ、尾びれ、臀鰭がつながって体の後半部に位置している。
体色は背中側が黒く、腹側は白いが、野生個体には背中側が青緑色や灰褐色、腹側が黄色の個体もいる。
また、産卵のため海に下った成魚は背中側が黒色、腹側が銀白色になる婚姻色を生じ、胸鰭が大きくなる。

分布・生態
日本全国に分布する。
日本以外にも朝鮮半島からベトナムまで東アジアに広く分布する。
成魚が生息するのは川の中流から下流、河口、湖などだが、内湾にも生息している。

えらの他に皮膚でも呼吸できるため、体と周囲が濡れてさえいれば陸上でも生きられる。
雨の日には生息域を抜け出て他の離れた水場へ移動することもある。
そのため、路上に出現して人々を驚かせることもある。
濡れていれば切り立った絶壁でも体をくねらせて這い登る。
そのため、「うなぎのぼり」という比喩の語源となっている。

細長い体を隠すことができる砂の中や岩の割れ目などを好み、日中はそこに潜んでじっとしている。
夜行性である。
そのため、夜になると餌を求めて活発に動き出し、甲殻類や水生昆虫、カエル、小魚などいろいろな小動物を捕食する。

泳ぎはさほど上手くなく、遊泳速度は遅い。
他の魚と異なり、ヘビのように体を横にくねらせて波打たせることで推進力を得る。
このような遊泳方法はウナギ型と呼ばれ、ウツボやハモ、アナゴなどウナギと似た体型の魚に見られる。

体内調節が得意なため、淡水でも海水でも生きられる。

生活史

ウナギは淡水魚として知られているが、海で産卵・孵化を行い、淡水にさかのぼってくる「回遊(こうかかいゆう)」という生活形態をとる。

従来、ウナギの産卵場所はフィリピン海溝付近の海域とされた。
しかし、外洋域の深海ということもあり長年にわたる謎であった。
しかし、2006年2月、東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授などが、ニホンウナギの産卵場所がグアム島やマリアナ諸島の西側沖のマリアナ海嶺のスルガ海山付近であることを、ほぼ突き止めた。
これは孵化後2日目の仔魚を多数採集することに成功し、その遺伝子を調べニホンウナギであることが確認されている。
冬に産卵するという従来の説は誤りとされている。
現在は6~7月の新月の日に一斉に産卵するという説が有力である。

2008年6月および8月には、水産庁と水産総合研究センターによる調査チームが、おなじくマリアナ諸島沖の水深200-350mの範囲で、成熟したニホンウナギおよびオオウナギの捕獲に世界で初めて成功した。
雄には成熟した精巣が、雌には産卵後と推定される収縮した卵巣が認められた。
また、水深100-150mの範囲で、孵化後2-3日経過したと思われる仔魚(プレレプトケファルス)26匹も採集された。
さらに、プレレプトケファルスが生息する層の水温が、26.5-28℃であることを初めて確認した。
この結果から、比較的浅いスルガ海山の山頂付近ではなく、もう少し深い中層を遊泳しながら産卵をしている可能性が推定されている。

卵から2~3日で孵化した仔魚はレプトケファルス(葉形幼生、Leptocephalus)と呼ばれる。
親とは似つかない柳の葉のような形をしている。
この体型はまだ遊泳力のない仔魚が、海流に乗って移動するための浮遊適応であると考えられている。
レプトケファルスは成長して稚魚になる段階で変態を行う。
扁平な体から円筒形の体へと形を変え「シラスウナギ」となる。
シラスウナギは体型こそ成魚に近くなっているが体はほぼ透明で、全長もまだ5cm ほどしかない。

シラスウナギは黒潮に乗って生息域の東南アジア沿岸にたどり着き、川をさかのぼる。
流れの激しいところは川岸に上陸し、水際を這ってさかのぼる。
川で小動物を捕食して成長し、5年から十数年ほどかけて成熟する。
その後ウナギは川を下り、産卵場へと向かうが、その経路に関してはまだよく分かっていない。
海に注ぐ河口付近に棲息するものは、淡水・汽水・海水に常時適応できるため、自由に行き来して生活する。
しかし、琵琶湖や猪苗代湖等の大型湖沼では、産卵期に降海するまで棲息湖沼と周辺の河川の淡水域のみで生活することが多い。
また、近年の琵琶湖等、いくつかの湖沼では外洋へ注ぐ河川に堰が造られたり、大規模な河川改修がおこなわれた。
これによって外洋とを往来できなくなっている。
それにより、湖内のウナギが激減した。
そのため、稚魚の放流が行われている。

分類

ウナギ科 Anguillidae はウナギ属 Anguilla のみからなる。
世界中の熱帯から温帯にかけて18種(内3亜種)が生息する。

ウナギ Anguilla japonica

オオウナギ Anguilla marmorata

暖流に面した本州・四国・九州に分布しており、南西諸島ではウナギよりも多い。
日本以外にも太平洋、インド洋熱帯域に広く分布する。

ヨーロッパウナギ Anguilla anguilla

大西洋、ヨーロッパに分布。

アメリカウナギ Anguilla rostrata

アメリカに分布。

以下の生物は名前のとおり外見は細長い体型をしていてウナギに似ているが、別の仲間に分類される。

フウセンウナギ

フウセンウナギ目という分類で、ウナギ目と比較的近い。

デンキウナギ

デンキウナギ目という分類で、ウナギよりもナマズやカラシンに近縁である。

タウナギ

タウナギ目に分類される。

ヤツメウナギ、ヌタウナギ

魚類よりもさらに原始的な無顎類(円口類)に分類される。

名前

日本では奈良時代の『万葉集』に「武奈伎」として見えるのが初出である。
平安後期頃まではウナギのことを「ムナギ」と呼んでいた。
「ウナギ」という語形は院政期になって登場し、その後は「ウナギ」で定着した。
そもそものムナギの語源には、家屋の「棟木(むなぎ)」のように丸くて細長いから、胸が黄色い「胸黄(むなぎ)」から、料理の際に胸を開く「むなびらき」から、など、いろいろな説がある。
しかし、いずれも民間語源の域を出ない。
前二者は奈良時代の用例「武奈伎」の「伎」が上代特殊仮名遣ではキ甲類の仮名であるのに対して、「木」「黄」はキ乙類なので一致しないという問題がある。
後者の省略説もムナビラキ→ムナギのような省略は通常では起こり難い変化だからである。
この他に、「ナギ」の部分に着目して、以下のような説がある。
「ナギ」は「ナガ(長)」に通じ「ム(身)ナギ(長)」の意である。
「ナギ」は蛇類の総称であり、蛇・虹の意の沖縄方言ナギ・ノーガと同源の語である。
参考 天叢雲剣「蛇の剣」
「nag-」は「水中の長細い生き物(長魚)」を意味する。
この語根はアナゴやイカナゴ(水中で巨大な(往々にして細長い)魚群をつくる)にも含まれている

いずれにしても、いまだに定説と言えるものがないというのが現状である。

なお、近畿地方ではウナギのことを「マムシ」と呼ぶ。
しかし、これはニホンマムシとは関係ない。
鰻飯(まんめし)が『まむし』と訛り、それが材料のウナギに転用されたものである。
他に、関西での調理法(正確には浜名湖・諏訪湖以西。)の特色である、蒸さずに蒲焼にして、飯の上に乗せた上に更に飯を乗せて蒸らす「飯蒸し」(ままむし)から来たという説がある。
同じく料理法から飯と飯の間で蒸すという意味で「間蒸し」とする説、飯の上にウナギやたれをまぶすものとして「まぶし」が転じたとの説もある。

また、ウナギという名前については鵜飼の時に、鵜が飲み込むのに難儀することから鵜難儀(ウナギ)となったという江戸の小噺がある。

漁法

日本ではウナギは重要な食用魚の一つで、年間11万トンものウナギが消費されている。
20世紀後半ごろには養殖技術が確立された。
輸入も行われるようになったとはいえ、野生のウナギ(天然もの)の人気は根強く、釣りや延縄などで漁獲されている。

さらにウナギに的を絞った伝統漁法も各地にある。

うなぎ掻き

棒の先に鉤をつけたものを巧みに操り、ウナギを引っ掛ける

うなぎ塚

ウナギの生息域に石を積み上げておき、石の隙間に潜んだウナギを捕る

うなぎ筒

竹筒などをウナギの生息域に仕掛けておき、ウナギが筒の中で休んでいる時に筒を引き揚げて捕る

遊漁としての釣りにおいてはミミズ等を餌にした釣り方が一般的である。
しかし、ルアーフィッシングで釣れることもある(いずれも夜間がメイン)。
餌釣りでの方法としては、ブッコミ釣り(コイなどのブッコミ仕掛けの変形、一本針が基本)、置き釣り(ウナギが通りそうな場所に針と糸が付いた竹杭を刺してしばらく置く)穴釣り(昼間ウナギがいそうな穴に小魚等をつけるための先端にまっすぐな針をつけた竹の棒と、針と糸をもち直接いれて釣る)等がある。
とくに置き釣りと穴釣りはウナギ以外には見られない釣りかたである。
ただ、簡単に釣れる魚ではない。

陸揚げ漁港

2002年度

宇佐漁港(高知県)

須佐漁港(山口県)

川越漁港(三重県)

広浦漁港(茨城県)

長井漁港(神奈川県)

養殖

日本のウナギ養殖業(養鰻)は、明治12年に東京深川 (江東区)で試みられたが、太平洋戦争によって一時衰退する。
のちに養鰻の中心地は浜名湖周辺へ移った。
現在、国内での都道府県別の養殖ウナギ収穫量は鹿児島県がもっとも多く、次いで愛知県、宮崎県、静岡県、高知県の順となっている。
日本全体の活鰻は2005年度で約2万トン養殖されている。

輸入品は台湾が20年以上の歴史をもっている。
しかし、現在はヨーロッパウナギのシラスウナギの稚魚を中華人民共和国に輸入し養殖したウナギが主流である。
台湾の活鰻は2005年度で約2万トン、中国は約5万トンと言われる。
種類は、日本と台湾ではニホンウナギ Anguilla japonica のみである。
中国ではニホンウナギ Anguilla japonica とヨーロッパウナギ Anguilla anguilla が8 2くらいである。
門司税関博多税関支署によると土用の丑の日がある7月が、年間を通して輸入量はピークになる。
2005年は6月の輸入量に比べて、7月は2倍近くの139トンに増加していた。
2006年は検査の強化や中国側が輸出を控えているため、台湾産が増えている。

ウナギの養殖はまず、天然のシラスウナギを捕ることから始まる。
黒潮に乗って日本沿岸にたどり着いたウナギの子ども、シラスウナギを大量に漁獲してこれを育てるのである。
養殖方法は、台湾と中国南部の広東省では池を掘っただけの露地養殖、日本と中国の福建省ではビニールハウスを利用した養殖が主流である。
ハウス養殖は、ボイラーをたいて水温を約30℃に保っており、成長を早めることができる。

なお、ウナギの人工孵化は1973年に北海道大学において初めて成功した。
2003年には三重県の水産総合研究センター養殖研究所が養殖業完全養殖に世界で初めて成功したと発表した。
しかし人工孵化と孵化直後養殖技術はいまだ莫大な費用がかかり成功率も低いため研究中である。
養殖種苗となるシラスウナギを海岸で捕獲し、成魚になるまで養殖する方法しか商業的には実現していない。
自然界における個体数の減少、稚魚の減少にも直接つながっており、養殖産業自身も打撃を受けつつある。

また、養殖ウナギと天然ウナギの見分け方は胴回りの太さと腹の部分の色で見分けられる。
一般的に天然ウナギの方が養殖ウナギよりも胴回りが太く、腹の色が黄色がかっている。

なお「養殖」と「洋食」をかけた地口(「このウナギはようしょくか?」で論争になる、といった小噺の類)なども、養殖ウナギが日本の食卓に普及するようになった時期に現われたものであり、時代を映していると言える。

輸出規制問題

2007年欧州連合がヨーロッパウナギの絶滅が危惧(きぐ)されシラスウナギの輸出を規制する方針を発表した。
ワシントン条約締約国会議でEU案が可決、規制が確定した。
これにより中国経由の輸出規制が始まる。
また、台湾も日本への過大な輸出に対して現地の養殖業者などが輸出規制を要望している。
日本側も国産シラスウナギで成り立っている業者と輸入物に頼る業者の対立がある。
一致した意見表明ができない状況になっている。
その為、全般的にウナギ価格の高騰は避けられないとされる。

輸入ウナギの安全性問題

2003年に台湾産鰻から合成抗菌剤スルファジミジンが検出された。
残留農薬に関する調査が厳重化され始める。
2005年にはらでぃっしゅぼーやが台湾産を国産と偽って販売した。
しかもその蒲焼から合成抗菌剤エンロフロキサシンが検出された。

2007年6月29日、アメリカのアメリカ食品医薬品局は中国産のウナギ、エビ、ナマズの1/4に発ガン物質が検出されたとして輸入方法を変更した。
今までは検査なく輸入可能であったが、第三者機関の証明書の添付を義務付けた。
中国政府は自国の検査証明書で通関可能とするよう交渉中である。

検出された物質のうちニトロフランとマラカイトグリーンは動物実験で発ガン性が確認されている。
それらは中国でも魚介類への使用が禁止されている物質であった。
マラカイトグリーンは以前に中国産のウナギから日本でも検出されたことがある。
ウナギの日本国内消費量10万トンのうち6万トンは中国産であった。
これをきっかけに日本国内でのウナギの売れ行きは激減した。

これに関して日本鰻輸入組合森山喬司理事長は、アメリカに輸入されたウナギから上記の物質が検出されたものの、「日本に輸入されている中国産ウナギは中国政府による検査・各工場の自主検査、日本での命令検査をパスしており安全だ」「ウナギが危ないと連日報道されて消費者の不安があおられ、ウナギの売れ行きは激減している。いかに努力して安全なものにしているか実態を理解してほしい」とコメントしている(中国産食品の安全性も参照のこと)。

中国側の検査の実情として、中国の国家品質監督検査検疫総局は2007年7月11日、中国の食品会社41社の安全管理に問題があったとして、輸出差し止めとした。
このうち11社は、日本向けに水産食品を輸出していた。
そのうち5社はウナギのかば焼きであった。
これらの工場は日本の通関時に違反事例を起こしており、既に日本への輸入は止められている。
また15社は中国側の検疫手続きを免れていたことが判明している。
また日本側検査の信頼性については、厚生労働省名古屋検疫所は同日(2007年7月10日)基準値の勘違いなどのミスで殺虫剤ベンゼンヘキサクロリドが残留する中国産ショウガ25トンが流通してしまったことを発表している。
また森山喬司理事長の所属する佳成食品株式会社は、2007年7月に細菌多数につき食品衛生法違反でウナギ廃棄を命じられている。
そんな事もあり、2007年の土用の丑の日の各コンビニエンスストアやスーパーマーケットは前年にくらべ値段は高くなったものの国産ウナギ使用のうな重等をアピールしていた。

コープさっぽろは2007年の土用の丑の日の翌日になって、2007年7月31日に日本水産の子会社に委託していた中国産鰻から発ガン性のある抗菌剤を検出したと発表、回収を開始した。
このウナギはweb上では「抗生物質などの薬品をほとんど使用していません」と宣伝され、店頭では「コープ札幌で取り扱っているうなぎは報道等で取り上げられているうなぎとは別の商品なので安全です」と広告されていた。

一方、国内産うなぎと称して販売されているうなぎの中にも、実際には外国産と表示すべきものがあった(産地偽装)。
台湾から輸入したうなぎに「愛知三河 一色産うなぎ」ブランドを付して流通させていたという事例があった。
これを受け2008年6月18日、農林水産省はそのようなうなぎが農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に違反しているとして業界団体等に適正な表示を依頼する文書を発出した

食材

ウナギは高蛋白質で消化もよい。
日本料理の食材としても重要で、鰻屋と呼ばれるウナギ料理の専門店も多い。
皮に生息地の水の臭いやエサの臭いが残っているため、天然、養殖を問わずきれいな水に1日~2日いれる。
そして、臭みを抜いたものを料理する(泥抜き・臭み抜きと呼ばれる)。

夏バテを防ぐためにウナギを食べる習慣は、日本では大変古く、万葉集にまでその痕跡をさかのぼる。
以下の歌は大伴家持による(「むなぎ」はウナギの古形。括弧内は国歌大観番号)。

痩人(やせひと)をあざける歌二首
石麻呂に吾(あれ)もの申す夏やせによしといふ物そむなぎ取り食せ(めせ)(3853)
痩す痩すも生けらば在らむをはたやはたむなぎを捕ると川に流るな(3854)

徳川家康の時代に江戸を開発した際、干拓によって多くの泥炭湿地が出来た。
そこに鰻が住み着くようになったため鰻は労働者の食べ物となった。
しかし、当時は蒲焼の文字通り、蒲の穂のようにぶつ切りにした鰻を串に刺して焼いただけ、という食べ方で、雑魚扱いだった。
鰻が現在のようなかたちで一般に食べられるようになったのは江戸後期からである。
特に蒲焼は江戸発祥の料理であることから、江戸の代表的食物とされる。
蕎麦ほど徹底した美学はないものの、「鰻屋でせかすのは野暮」(注文があってから一つひとつ裂いて焼くために時間がかかる)、「蒲焼が出てくるまでは新香で酒を飲む」(白焼きなどを取って間をつなぐのは邪道。したがって鰻屋は新香に気をつかうものとされた)など、江戸っ子にとっては一家言ある食べものである。

なおウナギの血液にはイクシオトキシンという毒が含まれるため、生で食べることはできない。
ただし熱を加えると変性し毒性が消えるので、加熱調理した分には危険はない。
生でも血液を完全に抜いて酢でしめれば刺身で食べることもできる。

ちなみに土用の丑の日や夏バテ予防に食べられる。
しかし、ウナギの旬は冬眠に備えて身に養分を貯える晩秋から初冬にかけての時期である。
したがって、秋から春に比べても夏のものは味がおちる。

また、古くから日本固有の俗信として、鰻と梅干は食いあわせが悪いとされる。

ウナギを食材とする料理には次のようなものがある。

白焼

たれをつけずに炭火で焼く。
ワサビ、大根おろしまたはショウガ醤油などをつけて食べる。

う巻き

鰻巻き。
ウナギの白焼きまたは蒲焼を芯にして巻いた卵焼きのこと。
とき卵に出汁を入れ、出汁巻き卵をつくる要領でウナギを巻く。
小口切りにして切り口が見えるように器に盛り、木の芽などを添えて供する。
「う巻き卵」とも。
稀に「ウナギのゴボウ巻き」(京都料理の八幡巻)をう巻きと呼ぶこともある。

蒲焼

日本で最も一般的な料理法。
開いて頭と骨を取り去った身に串を打ち、たれをつけて焼く。
関東では背開きにしていったん蒸し上げたものを焼く。
(腹開きのうなぎを蒸すと串から身がはずれてしまうため背開きとなる)
関西では腹開きにし、蒸さずに焼く。
九州では背開きで蒸さずに深めに焼くものが主流。
当初は筒切りにしたウナギに縦に串を打ち、焼いたものに山椒味噌などを塗って屋台などで供されていた。
その形が「蒲の穂」に似ていたことから蒲焼の名がついた。
油が強い為、労働者などには喜ばれたが下賎な食べ物とみなされていた。
一般に広まったのは開いて焼いたり蒸したりして油を落とすようになってからである。

日本で土用の丑の日にウナギの蒲焼を食べる習慣は江戸時代に平賀源内によって広まったという説が伝わっているが定かではない。
(夏にうなぎが売れない事をうなぎ屋が源内に相談したら、表にはるように土用の丑と書き渡されたところ売れるようになったとのこと)
近年では寒の土用の丑の日も広まりつつある。

鰻飯

御飯の上に蒲焼を乗せたもの。
用いる食器によって鰻丼と鰻重に分けられる。
食べる前にタレをかけ、山椒の粉を振りかけるのが一般的である。

ひつまぶし

名古屋名物のうなぎ飯の一種。
ルーツには各種の説がある。
名古屋市熱田区のあつた蓬莱軒が登録商標している。
一般に同店が元祖の一つであると消費者から認識されている。
うなぎの蒲焼を5ミリ~8ミリ幅に細切りにしたものをおひつのご飯の上に載せて供される。
(あつた蓬莱軒では木の切り株状の器を使う)
食べ方は以下のとおりである。
(1)一杯めは、おひつのご飯とうなぎを混ぜ、茶碗によそって食べる。
(2)二杯目は、わけぎと海苔の薬味をいれて食べる。
(3)三杯めは、出汁とわさびでウナ茶づけで食べる。
(この食べ方では、うなぎは蒸していない関西風を使う)
四分割しておいて最後に自分の一番好きな方法で食べることを推奨する店もある。

せいろ蒸し

福岡県柳川地方を中心とする北部九州では有名な鰻飯である。
コンビニやデパート地下の食品売り場でも見かける。
柳川の城主が冷えた鰻重を暖めなおす方法として始めた、とされる。
うなぎの蒲焼きと、タレを混ぜ込んだご飯を蒸篭で一緒に蒸すことで、うなぎやタレのうまみが芯まで染みこみ独特の香ばしさと風味を引き出す。
通常は錦糸卵を乗せ、店によってはご飯の間にも蒲焼きを挟んでいることがある。

うざく

焼いたウナギの切り身とキュウリ、ミョウガを使った酢の物。

肝吸い

胃を中心とした内臓部分を吸い物にする。

肝焼き

数匹分の胃などを串に刺してたれに浸け焼く。
本来「肝」と呼ばれるべき肝臓は、「レバー」という名称で供されることが多い。

うなぎの握り

うなぎの握り寿司。

うなり寿司

愛知県豊川市の新名物。
稲荷寿司をひっくり返し、うなぎの蒲焼きを切ったものがのせてある。
酢飯とうなぎがよく調和している。
名前の由来は「うなぎ」と「いなり」の合成語。

フライ

うなぎを一般的な白身魚のようにフライにし、胡椒のソースなどをかけて食べる。
日本ではあまり見られないが、ヨーロッパなどで供される。

うなぎボーン

うなぎの骨を揚げた菓子。

半助(はんすけ)

うなぎの頭部のことで、つまみにしたり豆腐と一緒に煮込んだりする。

かぶと焼き

数匹分のうなぎの頭部を串に刺してたれに浸け焼く。

うなぎパイ

「ウナギパウダー」入りのパイ。
浜松市の春華堂の菓子で、「夜のお菓子」というキャッチフレーズがある。

イギリスでは料理としてパイ生地にウナギのぶつ切りを入れて焼き上げる、料理としてのウナギパイが親しまれている。
これにマッシュポテトを沿え、リカーとよばれる緑色のソースをかけ回した一皿であるパイ・アンド・マッシュが、フィッシュ・アンド・チップスと並ぶロンドン庶民の味として親しまれてきた。
しかし、テムズ川産ウナギが希少化し、より安価な牛肉を用いたミート・パイで代用されるようになっている。
やはりぶつ切りのウナギが浮かぶにこごり、ジェリード・イールもある。

鰻の飯蒸し(うなぎのいいむし)

味付けした鰻と餅米を竹の皮で包んだもの。
主に蒸してから食べる。

ウナギは中国の広東料理、福建料理、上海料理などでも使われ、大韓民国でも食べる。
ヨーロッパウナギやアメリカウナギなどの他のウナギもイタリア、スペイン、フランスなど南欧を中心に、主に煮凝り料理として各地で食用にされている。
スペインには高価なウナギの稚魚の代わりに、すり身で作ったウナギの稚魚もどきまで販売されている。

一方、ユダヤやイスラームでは「鱗の無い魚は食べてはいけない」という戒律から、近年まで鱗が目立たない鰻を食べることはタブーとされていた。

ウナギに纏わる伝説

日野市の住民はウナギを食べない。
これは昔、村を多摩川の洪水から守ってくれたためといわれている。
その話は、多摩川で洪水が起き堤防が決壊してもうだめかと思われたときに、どこからともなくウナギの大群がやってきて堤防に空いた穴をふさいだ。
そのため、地元の住民がウナギを神として祭ったとされている。
それは地元、日野宮神社に祭られているとされている。
そのため地元住民は親子三代にわたってウナギを食べないという例もある。

慣用句

うなぎの寝床

うなぎのぼり

[English Translation]