ハンバーグ (Hanbagu (Hamburger))

ハンバーグまたはハンバーグステーキは、挽肉(豚肉や牛肉、またはその他の畜肉等を含めたあわせ挽肉)にタマネギ等の野菜類のみじん切りとコショウ等の香辛料を加え、鶏卵、パン粉を混ぜ、こね合わせたものを楕円形や円形などに整形して焼いた料理。
和製英語のひとつであり、英語ではハンバーガー(hamburger)、あるいはソールズベリー・ステーキ(Salisbury steak)と呼ばれる。

概要

この料理は、下ごしらえに少々手間が掛かるものの、非常に食べ易い状態になっているため、児童や老人等の咀嚼力が弱い人でも食べることができ、また栄養があり消化も良い。
大抵は付け合せに温野菜やサラダが用いられ、様々なソース (調味料)類で味付けがされている。
主に挽肉とみじん切りにした野菜にパン粉を混ぜ、塩を加えて肉の粘性を出し、卵を繋ぎとして焼き固めた物であるが、味の濃いスープで煮込んだ「煮込みハンバーグ」という料理もある。

特に児童に好まれる事もあって給食でも人気メニューであるほか、ファミリーレストランの主力商品でもある。
ナイフやフォーク (食器)といった食器を使わなくても簡単に噛み千切れるので、パンに挟んでハンバーガーにする事もでき、ファーストフードなどでも主力商品となっている。
日本では箸でも容易に切れ、和風の味付けがなされることも多い。

しかしその反面、ソースの味付け如何では肉の素材自体の品質によってさほど味が左右されないため、長らくは屑肉と呼ばれる商品価値の低い材料を食べられるようにする調理法とされる等の(やや不遇な)扱いを受けていた。
このため、ハンバーグはしばしば「質や程度の低い料理」と見なされる事がある。
元からして、労働者向けの大衆食としての側面も存在している(後述)。

様々な工夫を凝らす余地が随所にあるため、非常に多くのバリエーションが存在する。
味付けから使用する肉の種類や挽き具合、あるいは混ぜ込む材料や焼き加減などに工夫を凝らすことが可能である。
日本においてはハンバーグ専門店などに行かない限り焼き加減は聞かれることは少ないが、欧米諸国では聞かれることが多いと言われている。

歴史・変化

ハンバーグの起源は、ドイツのハンブルクで労働者向けの食事として流行したタルタルステーキを焼き固め、ソースをかけて味付けした料理からだと言われている(「ハンバーグ」は、を英語読みしたもの)。
なお、タルタルステーキは13世紀頃にヨーロッパにまで攻め込んでいたモンゴル帝国のテュルク系民族タタール人が食べた生肉料理を原型としている。

大航海時代、船内で備蓄されていた非常に硬い干し肉を乾燥前の状態に負けないくらい柔らかく美味しく調理するために生み出された調理方法(ハンブルグ港を主な寄港先としていた船舶で最も盛んだった)が発祥という説も有る。

アメリカ合衆国では世界大戦中等牛肉のステーキは贅沢なのでハンバーグに変えるという運動もあったという。
後にハンバーグパティをバンズではさんだハンバーガーが大人気となり、マクドナルド等ファーストフード店舗の主流となった。

1960年代以降の高度経済成長期における日本では、栄養豊富な畜肉が比較的高価な食材であった。
安価な挽肉(鶏肉と豚肉等)を使ったこの料理を食卓に上らせる事で、豪華な夕食を演出できるため、同年代以降の主婦が好んで夕食のメニューに取り入れた背景もあって、調理済みで後は焼くだけの物が発売されるなど、瞬く間に日本全国に広まった。
更には1970年代頃から急速に多様化したレトルト食品(レトルト・ハンバーグ)の登場・普及により、非常にありふれた料理となった。

特にレトルト食品のハンバーグに関しては、調理が簡単である(一度焼いたハンバーグをそのまま、又はソースと共に封入する事で、湯煎するだけで食卓に出す事ができる)事と、少々の材料面における味の不備も漬け込むソース (調味料)でフォローできる事、衛生的な生産工場(セントラルキッチン)による大量生産によって非常に安価に製造できる事により、ファミリーレストランにおいては、主力メニューであると同時に、収益率の高い商品となっていることが多い。
なおレストランによっては、レトルト食品のハンバーグでは焼いた際のふっくら感が出し難いために、焼く前の生のハンバーグを冷凍又は冷蔵してストックしておき、それを解凍して焼き上げるところもある。
今日のハンバーガーチェーン店では、この冷凍ハンバーグが広く使われている。

応用

ハンバーグの素材として一般的な豚肉や牛肉以外に、他の食材を使う場合も有る。
例えば鶏肉を使う等である。
さらに、肉類を使わない、魚肉系の肉を使う物、豆腐を使った豆腐ハンバーグなどもみられる。

刻んで入れられる野菜に関してはタマネギが最も多く用いられるが、ニンジンが入る事もあり、こちらはニンジンが苦手な児童でも喜んで食べる事ができるというもので、他にもグリーンピースなど児童が苦手とする野菜類の入ったものもある。
またシイタケを少量刻んで入れることで風味が増すことが知られている他、半分に切って種を取り除いたピーマンに、焼く前のハンバーグの材料を詰め込み、肉詰めピーマンが作られる。

チーズをハンバーグの上に乗せたり中に詰めたものは、チーズバーグまたはチーズハンバーグと言うことも有る。
付け合せとしてはその他に目玉焼きが載せられることもある。
ハンバーグを別の料理に取り込む事で、その料理をより豪華にする事も可能である。
ハンバーグカレーはその最たる物である。
また、ファミリーレストランなどでは彩りと栄養を考えて数種の野菜を添えることが多く、ニンジンのグラッセ(甘煮)、フライドポテト、インゲンの炒め物やパセリといった赤・黄・緑の三色の組み合わせがポピュラーである。
手軽さを考えてミックスベジタブル(ニンジン、トウモロコシ、グリーンピースの混合)で三色を揃える例も見られる。

そのほかにも、トマトベースのソース仕立ての「イタリアンハンバーグ」、ダイコンおろしと和風ベースのソース仕立ての「(和風)おろしハンバーグ」、デミグラスソースベースで煮込んだ「煮込みハンバーグ」などがある。

類似した料理

同様の材料を大きな塊のままオーブンで焼き上げたものはミートローフ、一口で食べられる大きさにしたものはミートボールと呼ぶ。
ハンバーグに衣をつけて揚げたものはメンチカツと呼ばれる。
ロールキャベツの中身もほぼ同じである。

日本では、食糧の保存加工技術が進歩した縄文時代中期のものと思われる、堅果などのデンプン質が残留した、ビスケットないしはパン状の「縄文クッキー」(パン(クッキー)状炭化物)と呼ばれる、炭化物の考古遺物が出土する。
炭化物の分析からは、植物質材料のほかに獣肉や血液および野鳥の卵が含まれる可能性が指摘され、現代のハンバーグに通じる食品が想定された。
分析に用いられた残留脂肪酸分析法は現在では信頼性が疑問視されているため、確実性には乏しいものの、縄文時代にはイノシシやシカが主要な狩猟対象となっていることから、可能性はあると考えられている。
また、焼かずに乾燥させたペミカンのような保存食であったとする説もある。

家庭で作るハンバーグ

家庭でハンバーグを作る際、幾つかの点で工夫すると、更に味が引き立つ。

生地

肉は牛や豚を単独で用いるよりも、合挽き肉の方が両方の長所が引き立って良いとされる。
日本では牛肉料理に脂身の繊細にのった霜降りが好まれるが、ハンバーグの場合には脂身が少ないほうが肉の風味が濃く味わえるため適しており、加えて赤身肉は日本では安価な傾向が強いことも家庭料理に向いている理由となっている。

また、多少手間がかかるものの、みじん切りにしたタマネギを先に炒めてから生地に加えることでより甘みが増す。

繋ぎのパン粉は、市販のものをそのまま使うよりも、細かくちぎった食パンを牛乳等でふやかしたものを用いる方が食感が増し、加えて味がまろやかになる。
ただし充分に小さくちぎらないとかえって食感を損ねる。
また耳の部分を用いても食感を損ねる。
なお、日本放送協会のためしてガッテンでは2009年4月22日の放送でパン粉の代用として麩と寒天を使用する方法を紹介している()。

加熱

大きなハンバーグを作る際、なかなか中心まで火が通らず、ひっくり返そうとして崩れてしまう事が有る。
この場合、焼く前に皿に置いてラップを掛け、電子レンジで肉汁が滲み出すまで加熱して焼くと、厚みのあるものも綺麗に焼け、中まで良く火がとおる。
電子レンジ加熱中に出た肉汁は肉の旨みを含んでいるので、ソースに利用する。

他にも、フライパンで焼き目をつけた後、予熱したオーブンで中まで焼き上げるという手法も用いられる。

食中毒予防

O157等の食中毒を予防するためには、厚みを減らし中心部を充分加熱する(75℃で1分等)べきであるとされる。

温度を測る目安としては、金串を刺してしばらく待って素早く引き抜き、先端部を唇に当て熱いと感じる程度がよいとされるが、温度を測りやすく計測部がステンレス鋼製チューブとなっていて、衛生的に利用できる料理用の電子温度計も販売されている。

[English Translation]