並行複発酵 (Multiple parallel fermentation)

並行複発酵(へいこうふくはっこう)とは、醸造酒の製造過程で起こる発酵の一種であり、麹の酵素によってデンプンがブドウ糖に変化する糖化と、ブドウ糖が酵母の働きによってアルコールに変化する発酵とが、同一容器中で同時に行われることをいう。
並行複醱酵または並行複醗酵とも書かれる。

並行複発酵によってだけ、度数が20度に近い高濃度のアルコールが生成できる。
これは、糖化の結果できたブドウ糖を、アルコール発酵によってただちに消費するからである。
もし、洋酒のように、まず糖化をしてから次にアルコール発酵を行う単行複発酵をすると、20度のアルコールを造るためには高濃度のブドウ糖液にならざるをえず、薄い水飴のようになって、酵母が活動できなくなってしまう。

なお、麹菌は好気性菌なので、日本酒のもろみの容器中では繁殖できない。
糖化には、麹が作った酵素が使われる。
いっぽう、酵母菌はもろみ中で繁殖できる。
したがって、もろみに原材料の蒸米と水を追加するときは、同時に麹を追加する必要がある。

並行複発酵によって醸造されるアルコール飲料は、中国の紹興酒に代表される黄酒や韓国のマッコリ、それに日本酒といった東アジア特有のものである。

周辺事実

ビールやウィスキーの製造過程においては、糖化とアルコール発酵の両方が同時ではなく別々に行なわれるので、単行複発酵(たんこうふくはっこう)という。

また、ワインのように初めから原料中にブドウ糖が含まれている場合は、糖化を行う必要はなくアルコール発酵だけでよいので、単発酵(たんはっこう)という。

[English Translation]