出前 (Demae (Food Delivery))

出前(でまえ)は、飲食店が自店で提供している料理などの飲食物を希望する顧客宅へ火急に配送するサービスである。
「仕出し」と呼ばれる場合もあり、あわせて説明する。

概要

出前とは、店舗で調理した料理などを希望する顧客宅へ配送する業務で、その起源は江戸時代中頃にまでさかのぼる。

店内に飲食スペースを設けない店や無店舗営業の業者による配送の場合はデリバリーと呼ばれることが多いが、厳密に区別ができるわけではない。
同様に、祝い事や法事などに用いる和食の弁当や寿司などの配送は「仕出し」と呼ばれることが多いが、こちらも厳密に区別ができるわけではない。

「出前」の場合は、火急に配達することを求める場合が多く、「仕出し」や「(ケーキなどの)配達」は事前に予約しておく場合が多いという違いもある。

類似のサービスにケータリングがある。
ケータリングは、注文主が用意する台所、あるいは移動調理車などを使って、現場で調理をするものである。
「出前」「仕出し」は、完成した料理を配達するという点で決定的に異なるが、日本では明確に区別されているとは言いがたい。

対象商品・業態

予約が不要の「出前」を行っている飲食店には、寿司・蕎麦・うどん・丼物・ラーメン・中華料理・カレーライス・ピザ・洋食などがある。
比較的安価なものが多い。

予約をすることが一般的なものには、パーティ用の食べ物や葬祭・宴会などの料理などがあり、しばしば「仕出し」と呼ばれる。
これらは一般家庭で用意することが難しい、あるいは面倒なものであり、比較的高価なものが多い。

企業の内部消費や接客用などにコーヒーやジュースなどの飲料を出前する場合もある。
また、出前される飲食物は、配送の都合で内容や量が店舗で出されるものとは異なることがある。

出前・仕出しを行う業種

そば屋

中華料理店

寿司屋

ピザ屋

- ピザ宅配ピザも参照

大衆食堂

喫茶店

洋食店

和食店

業務用の出前
待合茶屋などのように原則として調理は行わず客をもてなすための料理はすべて仕出しで用意するといった業態もある。

この業態の現代版として、繁華街においては個人客の出前を受け付けず近隣で営業する店舗などにのみ出前を行うケースもある。
店舗側は厨房や要員を節約しつつ多様な料理を提供できるようになるというメリットがある。

注文

日本においては、注文はほぼ電話による会話だけで行われてきたが、一種の通信販売なので近年はファクシミリをはじめ、店のウェブサイトからインターネット経由で受け付けることが増えている。
特に、2000年ごろからインターネットの出前ポータルサイトが普及してきており、中でも夢の街創造委員会が手掛ける「出前館」は、インターネットのない店舗でもインターネットからの受注ができる仕組みを開発し、インターネット出前受注の90%以上の市場占有率を開拓している。

また2004年には飲食店情報を扱うポータルサイトの草分け的存在である株式会社ぐるなびが、「ぐるなびデリバリー」サービス事業を展開。
シェアを伸ばしている。

料金

配送料金は無料、もしくはあらかじめ飲食物の代金に含まれている場合が多い。
このため少量(1人前など)の出前は採算に合わないこともあり、「出前は2人前以上」や「2,000円以上」、「1,000円以下の出前の場合には100円の出前料を頂きます」などとしている店もある。

形態

かつては自転車やオートバイで配達するとき、片手でハンドルを持ち片手に岡持ちを提げるアクロバティックな運転がみられた。
ホンダ・カブの方向指示器スイッチが変則的な取り付け方をしてあったり、自動クラッチを採用しているのはこのような用途を念頭において開発されたためであった。
その後は安全のために、出前用のオートバイに出前機(スプリングやエアクッションがついた専用の岡持ち台)を取り付けるか、荷台のある3輪スクーター(ホンダ・ジャイロ)を使うことが普通になっている。

容器
飲食物の容器は配送した業者によって、追って数時間後から数日中に回収されることが多いが、近年は使い捨ての容器を用いて回収の手間を省くケースも増えている。

そば屋の出前
注文と配達にはバックオーダーや調理場の混雑具合、道路の渋滞(特に夕刻の渋滞は夕食時間帯と重なり出前業界の大敵である)などの理由により、出前には遅延が付きものである。
これに対して苦情の電話を入れるとよく「今出ました」と言い訳されるといわれており、このことに例えて物事の遅延に対する安易な応対や言い訳を「そば屋の出前」と称されている。

配送手段

自動車

原動機付自転車

自転車

歩く

海外の出前

大韓民国では日本のラーメンと同様に大衆化したチャジャンミョンの出前が古くからある。
日本と同様にバイクを使い、運搬には岡持ち(「鉄カバン」と呼ばれる)を使用する。
チャジャンミョン以外に、ちゃんぽん、うどん、チャーハン、酢豚なども扱っている。

さらに近年ではピザやフライドチキンなどの宅配も登場し、またおでん日本国外のおでんやトッポッキを扱う屋台が携帯電話で注文を受け配達するケースもある。

一方、中華人民共和国や東南アジア諸国では、これまでは、ごく近隣に徒歩で配達することはあるが、日本のようにバイクなどを使っての配達はまず行われなかった。
しかし2002年ごろから、香港、上海市などでバイクや自動車を使っての宅配が急速に普及してきた。

[English Translation]