成人式 (Seijin-shiki ceremony (coming-of-age celebration))

成人式(せいじんしき)とは、日本の地方公共団体などが、成人式を行う年度内に成人に達する人々を招き、激励・祝福する行事(イベント)。
講演会やパーティーを開いたり、記念品を贈ったりする。

由来

成人を祝う儀礼は古くからあった。
男性には元服・褌祝、女性には裳着・結髪などがあった。
文化人類学や民俗学では、こうしたものを通過儀礼(イニシエーション)の一つとして扱う。

日本における今日の形態の成人式は、終戦間もない1946年11月22日、埼玉県北足立郡蕨町(現蕨市)において実施された「青年祭」がルーツとなっている。
敗戦により虚脱の状態にあった当時、次代を担う青年達に明るい希望を持たせ励ますため、当時の埼玉県蕨町青年団長高橋庄次郎が主唱者となり青年祭を企画した。
会場となった蕨第一国民学校(現蕨市立蕨北小学校)の校庭にテントを張り、青年祭のプログラムとして行われた。
この「成年式」が全国に広まり現在の成人式となった。
蕨市では現在も「成年式」と呼ばれており、1979年の成人の日には市制施行20周年、成人の日制定30周年を記念して同市内の蕨城址公園に「成年式発祥の地」の記念碑が同市によって建立された。

蕨市の「青年祭」に影響を受けた国は、1948年に公布・施行された国民の祝日に関する法律により、「おとなになったことを自覚し、みずから生きぬこうとする青年を祝いはげます」の趣旨のもと、翌年から1月15日を成人の日として制定した。
それ以降、ほとんどの地方で成人式はこの日に行われるようになった。
その後、1998年の祝日法改正(通称:ハッピーマンデー制度法)に伴って、2000年より成人の日は1月第2月曜日へ移動している。

新成人の定義

成人式の参加対象となる成人は、前年の「成人の日」の翌日からその年の「成人の日」までに誕生日を迎える人を祝う日となっている。
しかし、最近では前年の4月2日からその年の4月1日に成人する人を式典参加の対象にする、いわゆる学齢方式が定着するようになっている。

年齢方式の場合、誕生日の遅い早生まれの人が他の参加者が殆ど見ず知らずの人になってしまったり、ハッピーマンデー制度によりその年の成人の日は19歳で翌年の成人の日は21歳というケースがある(1987年1月9日~13日生まれの場合など)ためとも言われている。

他に札幌市の場合、1998年まではその年に20歳の誕生日を迎える人(例:1998年の場合は1978年の1月から12月までに生まれた人が参加可能)を成人式参加の対象者とする暦年方式が用いられていた。
しかし、受験で過年度生しただけで式典参加が困難になる場合が多いうえ、前年に他市町村で成人式の対象とならなかった人が翌年、進学や転勤で札幌市に転入した場合、2年続けて参加できなくなった。
そのため、若者の不評が多かったことから、2000年より学齢方式に変更されている。

1960年代までは、新成人は半数以上が既に社会に出ている勤労青少年だったが、1970年代以降、大学進学者(進学率)の増加や中卒・高卒就職者の減少から、新成人全体に占める在学者の割合も年々増加しており、現在に至っている。

開催日

成人式は現在では、成人の日、またはその前日(常に日曜日になる)に開かれることが多い。

他に、その年のゴールデンウィークやお盆、あるいは松の内に行う市町村も多い。
特に郡部(町村)で多い。
これは就職や進学で地元を離れる人が多いので、実家に帰省する人が多いお盆や松の内に行うほうが参加しやすい、晴れ着などに金銭をかけなくて済むという配慮が働いていると思われる(特に岩手県では、半数以上の町村がお盆に開催している)。
また、豪雪地では荒天で折角の晴れ着が汚れる、あるいは交通機関の乱れに巻き込まれるなどのアクシデントも考慮されている。

問題

出席率の低下
もともと成人式は、法律の趣旨にもあるように、一定の年齢に達した青年を行政などが祝福・激励し、これに対して参加者が、責任ある自立した社会人としてより良い社会の創造に貢献していくことを決意し、それを広く社会に啓蒙するためのものだった。

しかし、1970年代に入ると、出席率の低迷、成人式離れがクローズアップされ始めた。
また、後述のモラルに対する批判から、敢えて出席を控えたり、「(荒れている新成人たちと)一緒にされたくない」「単なる目立ちたがり屋な餓鬼の集まり」「(誓いの言葉などで)登場する新成人は関係者の息子、娘」と冷ややかに見ている新成人も多い。

都市部と郡部

都市化の進展で、郡部の成人式出席該当者が減少し、一方で都市部の該当者が顕著に増加した。

郡部では、高校卒業後に大学進学や就職などで都市部に出て行ってしまう者が多い。
大学生は冬休みが終わっていたり、社会人は既に正月三が日に休みをとっていて1月15日の成人式のためだけに帰省するのは困難な状況であった。
そのため、郡部ではお盆期間に成人式をする自治体が増加した。
そもそも、成人式への案内は住民票などを基に送られる事も多く、故郷の成人式の案内が来ないこともある。

都市部では、年々増加する該当者に対し、それら全員を収容できる施設を持っていない自治体が見られた。
そのため、成人式会場に行ったはいいが、満席で中に入られない者が出現する例が見られるようになった。
特に第二次ベビーブーム世代の成人式では、会場内に入れた人数より入れなかった人数の方が多い場合もあった。
また、会場内での誘導がないため、大きい会場では空席を探して歩き回ったり、暗い会場内で空席を見つけられなかった。
このように、自治体側の落ち度が参加者の式に対する軽視を助長する場合もあった。

モラルの低下
箱物行政と言われながら公共事業の予算が増加し続けた1990年後半までに、成人式の式典が充分開催できる施設が都市部でも拡充した。
しかし、第二次ベビーブーム世代が成人式を迎えた1990年代前半が過ぎると、少子化の影響で成人となる者の実数が減少の一途となっていった。
1990年代末ともなると、都市部では式典会場の空席が目立つようになり、新成人が会場に入らないという批判が聞かれるようになった。
また、空席の増加により、従来、会場外で友達と話していて会場内に入らなかったような層が会場内に入れるようになり、それまで会場外で行われていて問題とはならなかったようなことが顕在化してきた。
例えば、私語が収まらない、会場内で携帯電話を使う、そして一部では、数人の新成人グループが会場で暴れ回って式を妨害するケースなども見受けられる。
公務執行妨害罪を理由とした事件を中心に逮捕者が出るほどの騒ぎに発展した市町村もある。
又、新成人の中には中学や高校の同窓会的な意味合いで成人式が捉えられるようになってきた。
そのため、成人式というイベント自体の存在の意義が問われている。

成人式での七五三現象とは、式に出席する若者が、外面的には着物で豪華に着飾っていても、会場では久し振りに会った友人との談笑などに熱中する余り、主催する自治体首長などの式辞・講演に関心を示さず式典が騒がしくなり、その結果、本来一人前の大人としての決意をすべき場である成人式が、かえって若者のモラル低下を露見させる場となってしまう現象のことを言う。
以下これまで問題になった具体例を挙げる。

1999年、仙台市で行われた成人式で、エジプト考古学者の吉村作治の講演の際、新成人のマナーのあまりの低劣さを実感し「これは新成人ではなく新生児の祝いだ。二度と成人式で講演しない」と激怒した。

2000年には静岡市の小嶋善吉市長が式翌日の記者会見でやはりマナーの問題を指摘し、「成人としての名に恥じる成人式に税金を投入して続けるより、いっそ式そのものを打ち切りにするべきではないかと思う」と発言した。
だが、後述する通り呉服販売業界から「業界の衰退にかかわる」等と抗議が相次ぎ、結局大幅縮小という形で継続となっている。

2001年には高松市の成人式で新成人男性5人が増田昌三市長(当時)に向かってクラッカーを打つ事件や、高知市の成人式で新成人の一部が橋本大二郎高知県知事(当時)に「帰れ、帰れ」コールをして橋本知事を怒らせる事件があった。
これらの事件は全国で大々的に報道された。

那覇市では新成人者の一部が例年市街地でどんちゃん騒ぎをする問題があった。
このため2002年を最後に市主催の成人式を取り止め、校区ごとに分散開催する形をとっている。

2003年には姫路市の成人式で、式典終了後に会場周辺の駐車場で、新成人の複数の集団が喧嘩となり、止めに入った兵庫県警察姫路警察署の日本の警察官2名にも暴力を加える事件が発生した。
いずれの新成人も酒の臭いがしていたという。

2004年には伊東市の成人式で、新成人6人が式典を妨害する事件が起きた。

2006年には盛岡市の成人式で、新成人数人が暴れ、岩手県議会地方議会議員(当時)のザ・グレート・サスケと揉み合いになるなどした。

現在の成人式の原型となった青年祭の「次代を担う青年達に明るい希望を持たせ励ます」といった趣旨は、現代の若者にはそぐわなくなりつつある。
しかし、成人式を迎える成人どうしが久しぶりに会って交友を深める機会としての役割や、子どもが成人した姿を祝ってあげたいという親の気持ちもあることは確かである。

成人を迎える人が率先して自分たちの成人式を創っていくことが、成人式をよりよいものにしていくことにつながっていくという考えのもと、新成人に企画や運営に携わってもらう市町村が近年多くなっている。
しかし、新成人が参加するとはいえ、自治体関係者の意向と新成人の意向が対立した場合は自治体の意向が採用されることも多い。

また、テーマパークで開催して成人の門出を祝う(北九州市(1998年以降)、浦安市(2002年以降))自治体もある。

成人式ビジネス

成人式では単価の高い着物(特に女性の振袖といわれる呉服)を着用する新成人が多いため、和服業界にとって最大の稼ぎ時と見られている。
そのため、暴れる新成人に困ってはいるが、子どもの成人の記念に着物を着せたいという親からの要望や呉服業界からの要請もあって成人式を続けている自治体(例えば2000年の静岡市、2000年以降の那覇市)も多い。
近年、日本人の呉服離れが進んでおり、呉服店自体も減少の一途をたどっている。
若者に日本の呉服のよさをアピールする場となっている。
近年では女性のみならず、男性の紋付袴などの着物姿も多くなってきている。
が、主に元不良行為少年の新成人達が好みこぞって着る事が多いので、紋付袴は逆にイメージが悪くなっているという向きもある。
最近ではレンタルも増えているためそれで済ませる人も多い。
なお、成人式が終わると、B反と言われる呉服のアウトレットが開催される流れとなっている。

また、新成人の着付け・化粧・ヘアメイクなどをする美容業界にとっても、成人式の日は稼ぎ時である。
そのため、美容室は通常よりも早くから営業を開始し、着付けが出来る年配の女性や手伝いをしてくれる人を日雇いして、大忙しの1日となる。
式には参加せずに式の終了後に同級生と合流する若者が増えたり、人数が多く式を数回行うなどして、時間をずらすことによって混雑を緩和していることもある。
その他、成人式前には、本格的に化粧を始める新成人に対してメイク講習会を行ったりして、自社の化粧品の売り込みを行う化粧品業界の動きがあり、また、式当日に着付けが終わった新成人が記念写真を撮る写真館でも宣伝に力を入れたりしている。
このように、関連ビジネスの新成人に対する顧客獲得競争は熱を帯びているが、少子化の影響や式への参加率の低下、成人式そのものの存在意義が問われる中でこのようなビジネスは今後厳しいものになる。

さまざまな成人式

社内成人式

毎年高卒者を多く採用する産業で、駐屯地で寄宿生活を行う自衛官や全寮制の訓練機関(海上保安大学校、防衛大学校など)、祝祭日が書き入れ時となる百貨店、スーパーマーケット、外食産業などの小売業や鉄道、観光バスなどの運輸事業、及び業務の性格上交代勤務が多い製鉄、化学工業、繊維、紙、自動車工業などの製造業、電力・都市ガス・電話局などでは、成人の日も勤務となる従業員が多く、市町村が行う成人式に参加できない人も当然多くいる。

そのため、これらの業種では社内(職場内)で独自に成人式を実施する企業が多く見られた。
代表的なものにはとバスや名鉄グループがあり、毎年その様子が報道されるほど関心が高い。
しかし、1990年代以降は不況や大学進学者の増加などで高卒者の採用を取り止める企業が増えたため成人を迎える従業員も年々減少している。
加えてリストラも追い打ちをかけ、社内成人式の開催そのものを中止する企業が増えている。
逆に、トヨタ自動車のお膝元である豊田市では、同社の業務日程(トヨタカレンダー)に合わせて成人式の開催日をずらしている。

同様に、知的障害者のための成人式を行う知的障害者更生施設もある。

1/2成人式・立志式

最近では、学校行事や総合的な学習の時間(総合学習)などで、20歳の半分の年齢である10歳(小学校4年生)を対象に1/2成人式(にぶんのいちせいじんしき)を開く小学校が全国的に増えている。

また一部の中学校は中学2年または3年になると学校行事として立志式(りっししき)を行なうところがある。
これは昔の成人式にあたる元服を迎える時期が現在の中学生の時期にあたるため、その風習を学ぶ意味合いも兼ねている。

各地の成人式
沖縄県の石垣島にある白保村では「成人者が公民館に村人を集め、成人した事の喜びと村への感謝を踊りで表現する」といった行事が伝統的に行われ、テレビ朝日でも「荒れ模様となっている沖縄の成人式の中で」と、これを取り上げている。
地方によってはこういった形の成人式も多数存在する。

日本以外での事情

その他の国では日本のように成人年齢(国によるが、18歳や20歳、21歳など)に達した事を全国一斉に祝うような祭典を行う国はほとんどない。

[English Translation]