折り紙 (Origami (Paper folding))

折り紙(おりがみ、折紙)とは、紙を折って動植物や生活道具などの形を作る日本伝統の遊び。
また、折り上げられた作品そのものや、折り紙用に作られた正方形の専用紙のことも指す。
近年では折り紙の芸術的側面が再評価され、昔にはなかった複雑で優れた作品が生み出されている。
各国に伝承する折り方に加えて、新しい折り方も考案され続けている。
(各種の折り方は伝承折り紙の一覧を参照)
また、折り紙の持つ幾何学的な性質から、数学の一分野としても研究されている。

概要

古くは千代紙(ちよがみ)と呼ばれる彩色豊かな紙を使用した。
この為、折り紙の紙を千代紙という場合もある。
また、近年では伝統工芸品としても千代紙が販売されている。

現在の折り紙は、多くの場合、使用する紙は一枚で、はさみや糊などは使用しないが、2枚の紙を使うもの(例 手裏剣)やはさみで切り込みを入れるものもある。
また、複雑な作品や折り目がつきにくい場合などにはヘラを用いることもある。

緻密に、折ったり、折り目の間の空間に折り目の一端を挟み込むなどして、形を作り上げていく。
折り続けていくため、折り始める前の紙の大きさに比べ、出来上がった形はかなり小さなものになることもある。

代表的な折り紙には、鶴(折鶴、連鶴)、風船、紙飛行機、手裏剣、兜、奴さんなどがある。
ヨーロッパでは、スペイン語でパハリータ、フランス語でココットと呼ばれる小鳥(または鶏)の形をした折り紙が代表的である。
また、洋食のときに折られているナプキンも、広義の折り紙の一種である。

不切正方形一枚折り

「ふせつせいほうけいいちまいおり」と読む。
折り紙のうち、はさみを使用せず、正方形の紙一枚だけを用いた折り紙をこう呼ぶ。

原理主義的な折り紙であり、この折り紙を好む人は多いようである。

複合折り紙

対象をいくつかの部分に分けて折り、それを組み合わせて作品を作る折り方。
伝承的なものでは、『奴さん』と『袴』を組み合わせたもの。
紙に切り込みを入れなくても比較的簡単に複雑な形を表現でき、また色違いの紙を使うことでカラフルな作品に仕上げることもできる。
組み立てる際に糊や針金などを使う場合がある。

切り込み折り紙

紙に切り込みを入れてカドの数を増やしたり、一部を切り取ったりすることによって複雑な形を折りやすくする折り方。
折り紙愛好者からは邪道扱いされることも多いが、「不切正方形一枚折りにこだわって折り方が複雑になりすぎるより良い」という意見もある。
『秘伝千羽鶴折型』に見られるようなつなぎ折り鶴は、はさみを利用して作る。

ユニット折り紙

何枚もの紙を同じ形に折る。
それらを組み合わせ、一つの作品を作りあげる折り紙作品をユニット折り紙と呼ぶ。
ユニット折り紙の対象には対称性の高い多面体(一般に「くすだま」と呼ばれるものなど)、箱などが多い。
枚数としては2枚から数十枚、多いものでは1万枚以上もの紙を組み合わせることがある。
ユニットを組み合わせるときには、紙の摩擦のみで全体を支えるものが理想であるが、場合により糊付けや糸で綴じるケースもある。
ユニット折り紙作家としては、笠原邦彦、川村みゆき、布施知子などが有名。
類似のものに、折り紙細工がある。
伝承の「手裏剣」もまたユニット折り紙の一つである。

仕掛け折り紙

上記の折り紙に加えて、動かせる玩具として作られたもの。
古くは『カメラ』(シャッターが開く)や『羽ばたく鳥』(首としっぽを持って羽根を動かせる)など。
近年には神谷哲史の『黒い森の魔女』(魔女<>ドラゴンに変身する)などの複雑なものもある。

基本形

折り紙には、基本形というものがいくつかある。
例えば、鶴の基本形は4つのとがった「カド」を持っており、動物を折る場合ならこれらを頭や足に当てることで創作が容易になる。
以下に、その代表的なものを記述する。

鶴の基本形

伝承作品の折鶴を作る途中までの形で止めたもの。

あやめの基本形

伝承作品のあやめを作る途中までの形で止めたもの。
かえるの基本形ともいう。

さかなの基本形

さかなを作る途中の形で止めたもの。

とびらの基本形

折り紙を、長方形になるように半分に折ってから、「とびら」の形にしたもの。
ユニット折り紙のユニットを折る際にも使用される。

用いる紙

一般的には折り紙専用の正方形の紙を使う。
しかし、作品によっては長方形(主に辺の比が1√2のもの)その他の紙を使う場合もある。
新聞紙などを用いる作品(帽子、ミット、紙鉄砲など)もある。
紙幣を折り紙の素材とし、人物などの図柄を完成作品のデザインの一部に取り込むような試みさえある。
五角形や六角形や八角形など多角形の特殊な紙を用いる作品もあるが、こうした場合は自分で必要に応じ正方形の紙から切り出すとよい。

通常店でもっとも普通に売られている折り紙は15cm角であるが、それ以下・それ以上(5cm角、7.5cm角、24cm角、35cm角等)の折り紙も市販されている。
また、稀ではあるが円形の折り紙なども存在する。
彩色に関しても、両面カラーのもの、透明なもの、グラデーションや水玉など特殊な模様の入ったもの、表面が2等分や4等分に色分けされているものなどがあり、現在1000種以上の折り紙用紙が入手可能といわれている。

複雑な作品を折る場合には、金属箔を利用したホイル紙や、薄い和紙(破れにくい)の裏に金属箔(例えばアルミホイル。形が崩れにくくなる)を裏打ちした自作の用紙が用いられることが多い。

展示用の作品には、見栄えの関係で選定した洋紙や和紙を正方形(あるいは作品に応じた形)に裁断して使うことが多い。
厚手の紙(洋紙など)を随時、適度に湿らせてから折る、ウェットフォールディングという技法も使われる。
この技法を用いると、厚い紙を簡単に折ったり、皺を大幅に減らすことができる。
また、曲がった形を固定したり、紙を伸ばして(歪ませて)折ることもできる。

周りに正方形の紙がなくとも、例えば目の前にあるいらない書類などを工夫して正方形に整えれば、予め用紙を用意してなくとも折り紙を十分に楽しむことが出来る。

折り図

折り紙の折り方を人に伝えるため、その工程を絵(しばしば写真)で示す折り図が存在する。
折り図では、慣例的に、山折り線を一点鎖線(「―・―・―・―・―」)、谷折り線を破線(「― ― ― ― ―」)で表すことが多い。
また、理解を容易にするため文章が添えられることも多い。

主な折り方

折り紙では、基本的な折り方に以下がある。

山折り

谷折り

中割り折り

かぶせ折り

またその他にも、特別な折り方がたくさんある。

蛇腹折り

ミウラ折り

平織り

ぜんまい折り

歴史

折り紙の起源は明らかになっていない。
中国起源説、日本起源説、スペイン起源説等があるが、いずれも推測の域を出ない。
中国起源説は製紙の起源が中国であることから、折り紙の起源の起源も中国であろうとの説で根拠は乏しい。
日本の折り紙は下記のように他から伝わったものではなく独自に発達したもののようである。
19世紀にはヨーロッパにも独立した折り紙の伝統があり、日本の開国と共に両者が融合した。
現在では日本語の「折り紙」という言葉が世界に浸透しており、欧米をはじめ多くの国で「origami」という言葉が通用する。
現代の折り紙は日本やヨーロッパを起源とするものである。

日本の折り紙は大きく2種類に分けることができる。
一般に知られている折り鶴などの折り紙は遊戯折り紙と呼ばれ、熨斗などの折り紙は儀礼折り紙(または礼法折り紙)と呼ばれる。

儀礼折り紙

文献で確認できる限り、1680年に井原西鶴が「一昼夜独吟四千句」の中の一句「廬斉が夢の蝶はおりすえ」に詠んだ、雄蝶・雌蝶が最古の記録である。
雄蝶・雌蝶は銚子の口に付けるもので、銚子の包みが様式化したものである。
また、今日見られる熨斗も、熨斗鮑の包みが様式化したもので、儀礼折り紙の一例である。

儀礼折り紙は武家の礼法に含まれるもので、1764年に伊勢貞丈が著した『包之記』に「右の折形どもは、京都将軍の御代に用いられし折形也」という記述があるから、足利義満の時代、小笠原氏・伊勢氏・今川氏を中心に整えられたと考えられる。

遊戯折り紙

井原西鶴の『好色一代男』(1682年)に

或時はおり居をあそばし、比翼の鳥のかたちは是ぞと、給はりける。
花つくりて、梢にとりつけ、連理は是、我にとらすると。
よろづにつけて此事をのみ忘れず

とあるのが、最も古い記録である。

1797年に出版された『秘傳千羽鶴折形』は、明らかに大人向けに書かれており、当時から子供だけでなく大人にも折り紙を楽しむ人がいたことが分かる。
これが現存する世界最古の折り紙の文献とされている。

現存する折り紙でもっとも古いものとしては、森脇家旧蔵の作品群がある。
これには儀礼折り紙と遊戯折り紙の両方が含まれているが、遊戯折り紙については、19世紀前半に折られたものと推定されている。

ヨーロッパの折り紙

ドイツのゲルマン国立博物館およびザクセンフォークアート美術館に、19世紀前半に折られたものと推定されている作品群が所蔵されている。

ヨーロッパの折り紙は、フリードリヒ・フレーベルの幼児教育法に取り入れられ、日本の開国にともない日本に伝わった。

ヨーロッパの伝承作品として代表的なものに、パハリータ(ココット)、帆掛船(だまし船)、風船、紙飛行機(ダーツ)などが挙げられる。

近代・現代の折り紙

1950年代には、日本の吉澤章、高濱利恵、イギリスのロバート・ハービン、アメリカのリリアン・オッペンハイマー、サミュエル・ランドレットらを中心とする国際的な折り紙サークルが形成され、折り紙が世界的に普及した。

1983年に発売となった、『ビバ!おりがみ』(前川淳 (折り紙)・笠原邦彦 著、ISBN 4387891165)、および1989年に発売となった『Folding the Universe』(ピーター・エンゲル著)が皮切りとなり、近年複雑な作品も作られるようになった。
前川淳によって創始された「折り紙設計」の技法は特に大きな影響を与えており、これにより初めて複雑な作品を合理的にデザインできるようになった。

現在日本国内では日本折紙協会・日本折紙学会の両団体が存在する他、アメリカ・イギリスなど各国にも折り紙団体が結成されており、愛好者間の交流を深めている。
インターネットの普及などにもよって情報伝達の速度はいっそう上昇し、以前では考えられなかった速度で技術開発が進められるようになっている。

商業玩具化

ビー玉に対するビーダマン、けん玉に対するデジケン、ベーゴマに対するキャラコバッチ等と同様に、伝統玩具を商業玩具とする手法は折り紙に対しても実行された。
タカラトミーからはオリガミウォーズ、コナミからはオリグライドが発売されている。
折紙戦士という漫画作品が台湾でかかれ、これをアニメ化。

折紙の数学と応用

折り紙の応用、または研究にはいくつもの数学的課題が含まれている。
例えば、展開図を二次元の作品へと平らに折りたためるかどうかの問題 (flat-foldability) はそういった数学的課題のうちの一つである。

平らな紙は表面のどの点においてもガウス曲率が0である。
よって折り目は本来曲率0の直線である。
しかし濡れた紙や指の爪でしわをつけた紙など、平らでなくなった紙においては最早この曲率の条件はあてはまらない。

剛体折り紙の問題(即ち、折り目の位置で蝶番でつないだ板金を用いて、紙と同様に作品を折ることができるかどうか)は重要な実用上の問題である。
たとえば、ミウラ折りは剛体でも折ることができ、人工衛星の太陽電池パネルを折り畳むために用いられている。

またそれ以外にも、折り紙はエアバッグの折り畳みや医療用のステントグラフトの折り畳みにも応用されている。

折り紙に関連する人物一覧

折り紙作家は幾人もいるが、プロとして活躍しているものは一握りしかいない。
プロの折り紙作家は折り図を収録した本を執筆し、生計を立てているものが多い。

[English Translation]