招き猫 (Maneki-neko (a welcoming cat))

招き猫(まねきねこ)は、前足で人を招く形をした、ネコの置物。
猫は農作物やカイコを食べるネズミを駆除するため、古くは養蚕の縁起物でもあった。
養蚕が衰退してからは商売繁盛の縁起物とされている。

概要

右手(前脚)を挙げている猫は金運を招き、左手(前脚)を挙げている猫は人(客)を招くとされる。
両脚を挙げたものもある。
だが、“欲張り過ぎると「お手上げ万歳」になるのが落ち”と嫌う人が多い。
一般には写真のように三毛猫であるが、近年では、地の色が伝統的な白や赤、黒の他に、ピンクや青、金色のものもある。
色によっても「学業向上」や「交通安全」(青)、「恋愛」(ピンク)など、意味が違う。
黒い猫は、昔の日本では『夜でも目が見える』等の理由から、「福猫」として魔除けや幸運の象徴とされた。
黒い招き猫は魔除け厄除けの意味を持つ。
また、赤色は疱瘡や麻疹が嫌う色、といわれてきたため、赤い招き猫は病除けの意味を持つ。

由来

招き猫の由来にはいくつかの説がある。

豪徳寺説

東京都世田谷区の豪徳寺が発祥の地とする説がある。

江戸時代に彦根藩第二代藩主・井伊直孝が鷹狩りの帰りに豪徳寺の前を通りかかった。
そのときこの寺の和尚の飼い猫が門前で手招きするような仕草をしていた。
そのため寺に立ち寄り休憩した。
すると雷雨が降りはじめた。
雨に降られずにすんだことを喜んだ直孝は、後日荒れていた豪徳寺を建て直すために多額の寄進をした。
豪徳寺は盛り返したという。

和尚はこの猫が死ぬと墓を建てて弔った。
後世に境内に招猫堂がたてられた。
猫が片手をあげている姿をかたどった招福猫児(まねぎねこ)がつくられるようになった。
ちなみに、この縁で豪徳寺は井伊家の菩提寺となったといわれる。
幕末に桜田門外の変で暗殺された井伊直弼の墓も豪徳寺にある。

また、同じ豪徳寺説でも別の話も有る。
直孝が豪徳寺の一本の木の下で雨宿りをしていたところ、一匹の三毛猫が手招きをしていた。
直孝がその猫に近づいたところ、先ほど雨宿りをしていた木に雷が落ちた。
それを避けられたことを感謝した。
直孝は豪徳寺に多くのの寄進をした…というものである。

これらの猫をモデルとしたもうひとつのキャラクターが(ある)。
彦根城築城400年祭のマスコット「ひこにゃん」である。

前述のように、招き猫は一般に右手若しくは左手を掲げている。
だが、豪徳寺の境内で販売されている招き猫は全部右手(右前足)を掲げ、小判を持っていない。
これは井伊家の菩提寺になったことが原因で、武士にとって左手は不浄の手のためである。
そして小判をもっていない理由は(次の通りである)。
「招き猫は機会を与えてくれるが、結果(=この場合小判)までついてくるわけではない。
機会を生かせるかは本人次第」という考え方から(来ている)。

自性院説

東京都新宿区の自性院が発祥の地とする説がある。

ひとつは、江古田・沼袋原の戦いで、劣勢に立たされ道に迷った太田道灌の前に猫が現れて手招きをした。
(猫は彼を)自性院に案内した。
これをきっかけに盛り返すことに成功した太田道灌は、この猫の地蔵菩薩を奉納した。
このことから、猫地蔵を経由して招き猫が成立したというもの。

もうひとつは、江戸時代中期に、豪商が子供をなくし、その冥福を祈るために猫地蔵を自性院に奉納した。
そのことが起源であるとするもの。

他にも、東京都豊島区の西方寺起源説、民間信仰説などいくつもの説がある。
いずれが正しいかは判然としない。

招き猫のモデルは、毛繕いの動作ではないかという説もある。

招き猫の現在

日本一の生産地は愛知県常滑市である。
他の名産地としては同県瀬戸市があり、ともに主として陶器製である。
ほかに群馬県の高崎市近郊などで、だるまとともに、同じ製法で生産されている。
(木型に和紙を張る「張り子」によるもの)。
更に近年はプラスチック製品なども登場し、今でも毎年数多くの招き猫が流通している。

9月29日は「招き猫の日」に制定されている。
この日の前後の土日を中心に、三重県伊勢市、愛知県瀬戸市、長崎県島原市などで来る福招き猫まつりが開催されている。

招き猫にちなんだもの

和歌山電鐵和歌山電鐵貴志川線の貴志駅では、招き猫になることを期待され、三毛猫の「たま (猫の駅長)」が駅長に任命されている。
このたま駅長をモデルにして、愛知県瀬戸市の招き猫メーカーが制作した特製の招き猫が貴志駅に贈られている。
これは乗降客の増加を願う意味から左手を上げる形となっている。

千葉ロッテマリーンズの成瀬善久投手は招き猫のような投げ方(をする)。
(そこ)から、投球フォームに招き猫投法というニックネームをつけられている。

日本国外の招き猫

中国でも街角にて、手を振る機能を備えた、金色の招き猫を見ることがある。
多くは左手に“千両小判”を持っている。
だが、中国人に、その意味する所が分かっているのかは謎である。
台湾では1990年代の日本文化ブーム以来、日本と同じ型の招き猫を店先やレジスターの後ろなどに置いている店が多い。
猫の色や手の位置による願いの意味も理解している場合が殆どである。
さまざまなご利益を受けるために、複数種の色やポーズの招き猫を店先に並べることも多い。
米国ニューヨークの中国人街では招き猫はポピュラーな存在である。
レストランの入り口などに日本のものとほぼ同じ型の招き猫がよく置かれている。

招き猫はアメリカでも人気があり、お土産用や輸出用としても製作されている。
これらは “dollar cat” や “welcome cat” や “lucky cat” と呼ばれる。
(特にアメリカ合衆国ドルを抱えたものを “dollar cat” と呼ぶ)。
ただし、手の方向が日本と逆向きで、手の甲に当たる部分を前に向けている。
これは手招きする手のジェスチャーが、日本とアメリカでは逆である。
(欧米では手のひらを相手に向ける日本の招き方だと「失せろ」になる。
日本における「しっしっ」と動物などを追い払う動作)。
(上記は、このような)文化の相違に起因する。

[English Translation]