日本の食事作法 (Japanese Table Manners)

日本の食事作法(にほんのしょくじさほう)とは、日本において食事をする際の作法(マナー)である。

概要

本項では、日本での食事における一般的な作法を紹介するが、これは場所や状況によって多少変化する。

特に日本人以外の人が、日本で食事をする時に判りやすいように紹介する。

ただし現代の日本では、必ずしも日本人の全てがこれら作法に精通している訳ではない。
また多くの日本人は、まえもって断りを入れた無作法に対しては寛容(あまり批判しない)である。
作法などに自信のないときは、あらかじめ日本の食事文化や作法は勉強中であることを断っておくといい。
そうすると、失敗しても悪い印象を与えないで済むだけでなく、学ぶ意思を強調することで好意的に接してもらえる可能性も出てくる。

食器

多くの場合、食事の際には箸を用いる。
現代ではフォーク (食器)、スプーンなどの用具を用いることもある。

果物や菓子などの一部の食材・料理は手を使って食べても良いが、食肉・魚介類などの料理を用具(食器)を用いず手づかみで食べてはいけない。
ただし寿司や茹でたカニなどのように手で掴んで食べることを前提とした料理もある。
ただし、寿司は格式によって箸で食べることを求められる場合もある。

ほとんどの場合は、料理と一緒に食事に必要な食器が一そろい付いてくるため、箸などが付属しているかどうかを確認する。

椀を持つ

日本では椀や小皿を手で持って食べることが許されている。
逆にご飯茶碗や味噌汁の椀などを手で持たずに食べたり、皿に身を乗り出して口が料理を「迎えに行く」ことが無作法とされる。
同じ箸文化圏の中国、韓国、東南アジアでは、皿を持って食べる行為を「路上生活者ようだ」として忌避されており、世界でも日本の食事作法は珍しい。

椀の持ち方は、左手の指を平たく伸ばし、親指を起こして椀の縁に引っ掛け、残りの四本が底のところにある「糸底」(底の円周状に突起している部分)をのせるようにして持つ。
こうすれば椀や丼の中身が熱いスープ(味噌汁など)でも、熱い思いをせずに持つことができる。
人差し指・中指・薬指・小指はまっすぐそろえたほうが、より洗練された持ちかたに見える。
陶磁器でできた丼や茶碗など、やや重たいものは安定して持つために、親指のつけねを縁につけて安定させる。

茶道の茶碗は非常に高価な工芸であることも多いため、落とさないように気をつけねばならない。
そうする上でも、右手を添え両手でしっかり持ったほうが良い。


箸の使用方法

- 嫌い箸を参照。

日本ではフォーク、スプーンなどの別段の用具が供されていない限り、全ての料理(液状の料理を除く)は箸で食べるのが基本である。

箸は食べ物をつまむ(はさんで持ち上げる)道具であるため、料理を突き刺すべきではない。
ただ持ち方が練習を必要とするため、箸に不慣れな場合はあらかじめ断って、多少のマナー違反には目をつぶってもらうしかないだろう。
箸の持ち方は箸使用法を参照。

なお日本の食器でも漆器(木材でできたものに漆を塗装してある食器)は繊細で傷付きやすいため、漆器に対してスプーンやフォークなど金属でできた食器を使うことはできない(傷を付け壊してしまうため)。
このため、箸に不慣れだからと和食(特に懐石料理のような格式を重んじるものでは漆器が多用される)の席でスプーンやフォークを要求しても嫌われることがある。

食べ方

日本では、多くの場合、複数の皿が同時に食客の前に供される。
この場合、一つの皿の料理だけを食べてその皿を空けてしまうのは無作法とされ、複数の皿の料理を、順番にバランスよく食べ分けなければならない。
多くの場合は、それぞれの料理を順番に口に運ぶことで、味を最大限に楽しめるよう配慮されている。

出された料理は残さず食べる。
この「残さず食べる」という風習は、食べ物の大切さ、命をいただいているという食べ物に対する感謝の気持ちが込められている(もったいない参照)。
ただし、食物アレルギー、食のタブーなど特別な理由がある場合にはその限りではない。
残す場合には苦手とする食べ物である、満腹である、アレルギーや特定の禁忌がある等の市場を述べて丁寧に断ることが礼儀である。

ご飯の食べ方

- 箸で食べる。
丼物はかき混ぜて食べない。
具とご飯は交互に食べる

汁物の飲み方

- 音は立てない。
和食の場合、器を左手で持ち口をつけて汁を飲む。
その具は箸を使い散蓮華やスプーンは使わずに食べる。

飲み終わった後、お椀の「ふた」は食卓に(又はお膳)に上がった状態と同じようにする。
理由は、逆さにすると「この料理は不味かった」という無言の感想になるため。
また、お椀の柄を傷つけないためという理由もある。

麺類の食べ方

- 素麺などの麺類は割り箸を用いてすすって食べる習慣がある。
すする音が出ても、わざと大きな音を立てない限りは問題が無い。
パスタなどの外来食は、すすらない、音を立てない、皿を持たない。
その地域の作法に従う(郷に入っては郷に従う)。


– 食器類で音を立てない。
口の中に食物が入った状態で音を立てない。
音を立てて咀嚼をするのは禁物である。

会食

基本的に食事中は会話をしてはいけない。
口にものが入ったまま喋ると嫌われるのは共通している。
会話をするときは、料理が途切れたときなど、食べるために口を動かしていない時にする。

複数人で会食する時は、食事のペースに注意を払い、他の人より著しく早く食べ終わったり、あるいは他の人が食べ終わっているのに自分はまだ食事中であるなどしてはならない。
他の人とペースが著しく違ってはならない。
途中で席を立つのが無作法なのは共通している。

座敷

座敷など座布団の上に座る場所での食事などでは、座る位置がその場の上下関係(ヒエラルキー)を暗に示している(→上座)。
多くの場合では、入り口から最も遠く、掛軸や華道が飾ってある場所が「上座」とよばれ、一番目上の人か大切なゲストが座る位置である。
また座布団を足で踏むのはかなり失礼な行為となる。

仕事(ビジネス)上でトラブルを避けるためには、案内する者に名刺などを渡して、案内され示された場所に座るのが一番である。

畳がしいてある場所では履物(靴・サンダル・スリッパ)を脱ぐ。
これは畳の上で履物を穿くのは葬儀中の死者以外におらず縁起が悪いこととされるためである。
このほか、障子や襖の敷居(しきい:障子や襖が移動する木材でできたレール)を踏むのも無作法とされる。
そのため、敷居は意識してまたぎ越えるようにする。
敷居は部屋と廊下の境目になっている部分にある。


格式を重んじる席では、酒類は食事が一段落した後や、料理ができるのを待たせる間に出てくる。
料理を主に食べている間は、酒は出ない。
日本食であるにも関わらず、料理と酒が一緒に出てくる場合は、あまり格式の関係ない、くだけた席と考えるべきである。

その間は酒と少量の料理が出るが、この間は「酒を飲みながら談笑する」など、ある程度はくつろいだ時間になるため、酒があるうちは作法をあまり気にしないでも問題ない。

備考

祈りとは別に食事を始める時の挨拶「いただきます」と、食事を終えた時の挨拶「ごちそうさま」という日本独特の習慣がある。
双方とも謙譲語である。

日本では、左利きの場合でも文房具や箸を持つ場合に右手で持つことを幼いうちから求められ矯正される場合も多い。
これは文字の書く方向の教育や食器の多くが右利きに特化しているためである。
ただ近代以降、こういった矯正が実のないものという見方も増えてきた。
また、左利きに特化した器具も少数ながら登場している。
それでも日本の社会では左利きはマイノリティであるため、左利きの場合は予め断りを入れるか、左利きに配慮して配膳してもらう必要があるかもしれない。

最近では海外にも日本料理店が増えた。
このことで、箸に抵抗感のある外国人も多少減ったことがある。
また、昨今の日本料理の海外進出により、日本の食事作法も理解されつつある。

[English Translation]