旧鼠 (Kyuso)

旧鼠(きゅうそ)は、変化して何百年・何千年を生きているという日本のネズミの妖怪。

中型イヌほどの大きさで、ネコすらも食べるといわれる鼠であるが、その反面、猫と交わり、血のつながった子猫(後述)を育てることもあるという。
あるものは3千年余を生き続けているとされる。

特徴

江戸時代の奇談集『絵本百物語』によれば、文明 (日本)年間、ある家の厩舎に旧鼠が棲みついていたという。
この化け物は、歳を重ねて妖怪と化し、さらに3千年余りを生き永らえているという、怖ろしく大きな鼠であった。
そのような所へある日1匹の猫がやってきて旧鼠と交わり、やがて5匹の子猫を産んだ。
しかし母猫は、のち、毒を食って死んでしまう。
親無しとなった子猫たちに対して旧鼠は、夜な夜なそのもとへやってきてこれらの世話をし、猫たちが無事に育った後にどこかへと姿を消したという。

また同書によれば、大和国(現在の奈良県)にいた旧鼠は、その毛色が赤白黒の三毛というもので、いつも猫を食べていたという。

そのほか、江戸中期の随筆『翁草(おきなぐさ)』には以下のようにある。

宝暦も初めの頃(1751年頃)の尾張国は愛知郡 (愛知県)名古屋郷(現・愛知県名古屋市)での話。
毎晩のように行灯の火が消える家があり、原因は何であるかと調べたところ、夜中に旧鼠が現れて灯りに使う魚油を舐め取っていたという。

そこでこの化けもの鼠を退治すべく猫を用意して夜を待ち、かくして旧鼠が現れた。

猫は旧鼠を威嚇して飛びかかる。
しかし旧鼠は猫の爪にかかることなく、それどころが猫の喉に噛みついて殺し、まんまと逃げ去ってしまった。

家の者は大いに驚き、改めてあちこちを回って鼠退治の巧い猫を捜し当て、再び旧鼠に挑むこととなる。
夜が来て、いよいよ旧鼠と猫はにらみ合う。

時が過ぎ、ついにたまりかねた旧鼠は動いて猫と組み合い争ったが、またもや猫を噛み殺して逃げ去ったという。

こうして人々は、ことわざ「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」を地で行くありさまを目にしたとのことである。

[English Translation]