死絵 (Shini-e (death prints))

死絵(しにえ)は、役者、文学者などで有名なものが死去したとき、その冥福を祈るために版行された似顔絵の浮世絵である。
生前の業績、辞世、法号などが記された。

概要
芝居錦絵のひとつであると言える。

現存するものでは寛政11年5月13日22歳で死去した6世市川團十郎のもの、8月28日26歳で死去した4世中村傳九郎のそれが最古のものであろうという。

おおむねこの頃から行われたらしく、明治34年市川左団次の死去した頃まで盛んに行われ、絵草紙屋の店頭に並べられた。

大坂で自殺した8世団十郎の死絵は200余種、出たという。

初期は細絵や間錦などもあるが、多くは大錦で、しかも一枚物が普通であった。

シキミや数珠を持った絵姿、舞台上での当たり役を描き、戒名、行年などを書き添えたもの、辞世の歌句、追善のことばをいれたものなどが一般的であった。

文政以後から明治初めまでおびただしい数が出版され、構図も変化していった。
なかには漫画風にしたり、蓮台座という芝居というふうにいささかふざけた図柄もあった。
販売上の競争も当然あり、少しでも早く版行しようと、戒名、死去月日、行年などをよく調べず、いいかげんなものさえある。

いわば乱作期の死絵には、画家の記名がないのが普通である。

舞台の夫婦役者であいついで死去した役者の場合、これをあわせて1つに描くこともなされた。

これは文化9年の4世沢村宗十郎と世瀬川路考とが最初であろうという。

女形は女性姿に描かれたから、4世尾上菊五郎夫妻の死絵はどちらが夫かわかりにくい。

ただし俳優の夫妻を描いたものは舞台上の夫婦役とはちがってほかにはほとんどない。

絵葉書、ブロマイドが流行し、芝居錦絵はすたれた。

[English Translation]