草双紙 (Kusazoshi Style Illustrated Pulp Books)

草双紙(くさぞうし)とは、江戸時代の戯作文芸の一種で、絵を中心に仮名で筋書きが書き込まれた物語。
絵草紙(絵双紙)または単に絵本と呼ばれることもあった。
子供向けのものが多かったが、次第に大人向けの洒落たものや滑稽なものが書かれるようになった。

種類
表紙の色と内容によって以下のように分類される。

赤本
草双紙の初期の作品。
享保の頃が全盛期。
貞享、元禄から宝暦ころ。
大きさは半紙半截、1冊5丁を形式的条件とした。
初期のものは、半紙半截よりやや小さく、赤小本といった。
子供向けの読み物。
桃太郎、舌切り雀、さるかに合戦などの昔話や絵解きなど、教育的な要素が強く、正月の贈答品にもなっていた。
おおむね鳥居清満、近藤清春など画工により作られた。

黒本
表紙の色から黒本という。
敵討ちなどの忠義や武勇伝、浄瑠璃・歌舞伎、謡曲、仮名双紙、軍記物、お伽双紙、浮世双紙など多様な内容になってきた。
およそ創作性が加わった。
作者と画工を兼ねる場合が多い。
同一内容が赤本、黒本の2種として同時刊行されさえした。
青本と前後して流行するが、体裁が野暮ったいとして早くすたれた。
永享年間から刊行され、半紙半截5丁、まれに6丁を1冊とし、2、3冊で1部とした。
青年男女を読者とし、内容も赤本より高まり、安永4年以降もわずかに刊行された。

青本
黄色(もえぎ色)の表紙(黄色を青と称した)で、少年や女性向けに芝居の筋書きなどを書いたもの。
おとぎ話、歌舞伎・浄瑠璃物、歴史物などがある。
黒本と前後して流行した。
内容も似たようなものであるが、明和・安永の初めが全盛期であった。
しだいに男女の恋愛や遊里なども取上げられるようになった。

(大人向けの黄表紙というジャンルが生まれるが、同時代にはまとめて「青本」と呼ばれていた)

黄表紙

大人向けの娯楽性が強い本。
筋書き以上に、言葉や絵の端々に仕組まれた遊びの要素を読み解くことに楽しみがあった。
表紙の色は黄色で当時は青本と区別されていなかった。
安永4年に刊行された恋川春町の『金々先生栄花夢』が黄表紙の代表作である。
のちにはこれ以降の草双紙を黄表紙として青本と区別するようになった。
フキダシの様なものが描かれるなど現代の漫画に通じる表現技法を持つ。
漉返半紙または上半紙半截二つ折本、1冊5枚の形式、これが2冊または3冊で1部をなす。
研究者によっては安永4年から文化3年刊行のものをいう。

合巻

長編化し、それまで五丁で一冊に綴じていたものを十丁ないし十五丁単位で一冊に綴じたものだった。
(この形式を明瞭にとったのは、文化3年の式亭三馬の『雷太郎強欲悪物語』からである。三馬は合巻形式の発案者であるという)。
絵入りだが、内容も比較的読本に近い。
草双紙と言えば合巻のことを指すこともある。
柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』などが代表作である。
しかし天保の改革の影響により華美な装丁が禁じられ、いったんは衰退する。
しかしこの改革によって好色画・好色本が禁圧され人情本が衰退すると、人情本の読者が合巻に流れて刊行点数が増大した。
また改革の影響で既存の版元の枠組みが崩れたことにより、新興の版元が多くの合巻を出版するようになった。

明治に入ると合巻の作者は執筆の場を新聞の連載小説に移し、新たな読者層を獲得した。
長編の伝奇ものが流行した。
また活版印刷の導入によって絵に対して文章の比重が高まったほか発行部数の増大などの変化があった。

[English Translation]