鬼 (Oni)

鬼(おに)は、日本の妖怪。
民話や郷土信仰に登場する悪い物、恐ろしい物、強い物を象徴する存在。

そこから鬼という言葉には「強い」「悪い」という意味もある。
(鬼 (曖昧さ回避)でも説明。)

近・現代の鬼

現代の日本人が、「鬼」と言われて一般的に連想する姿は、頭に角と巻き毛の頭髪を具え、口に牙を有し、指に鋭い爪が生え、虎の毛皮の褌を腰に纏い、表面に突起のある金棒を持った大男である。
これは、丑の方と寅の方の間の方角(艮うしとら)を鬼門と呼ぶことによるもので、牛の角と体、虎の牙と爪を持ち、虎の皮を身に付けているとされた。
この姿は平安時代に確立したものである。

余談だが、丑寅の方角を鬼門とする時、その対にあたる方角、猿(申).雉(酉).犬(戌)に守護の役を与え、鬼退治に向かう桃太郎もある種の意味を持つと推測できる。

酒呑童子は赤毛で角があり、髭も髪も眉毛もつながっており、手足は熊の手のようであるとされている。

鬼は元々はこのような定まった姿は持っておらず、後述する語源の「おぬ(隠)」の通り姿の見えないこともあった。
まれには、見目麗しい異性の姿で現れて若い男や女を誘うことがある。

現在の鬼の姿は仏教の羅刹が混入したものである。

民話に登場する鬼は、金または栗色の髪で赤い肌である事が多い為、ロシア方面などからの海賊を、外国人を知らない民衆が見て怪物だと思い込んだのではないかとも言われている(色素の少ない肌は日焼けすると赤くなる)。

由来

「おに」の語はおぬ(隠)が転じたもので、元来は姿の見えないもの、この世ならざるものであることを意味した。
そこから人の力を超えたものの意となり、後に、人に災いをもたらす伝説上のヒューマノイドのイメージが定着した。
さらに、陰陽思想や浄土思想と習合し、地獄における閻魔配下の獄卒であるとされた。

百鬼夜行

百鬼夜行とは、平安時代に都の中を歩いてゆくとされた化け物行列のことである。
『宇治拾遺物語』巻一の十七で修行僧が龍泉寺という寺で、百鬼夜行に遭った話が伝わっている。
また、『今昔物語集』にも巻第十四に若者が百鬼夜行に遭ったという話が伝わっている。
当時、百鬼夜行を目撃すると死んだり病気になるなどと恐れられていたが、この二つの話はどちらも信仰が身を助けたという話になっている。

赤鬼・青鬼

『宇治拾遺物語』巻一には、瘤取り爺の説話が所収されているが、爺が目撃した鬼として、赤い者や目が一つの者、口がない者など様々な異形な者がいたとされている。

藤原千方の四鬼

藤原千方に使役されたと言われる四人の鬼。
藤原千方の四鬼を参照のこと。

羅刹国

『今昔物語集』に登場する女性の鬼しか存在しない島。
後に日本の南方あるいは東方に存在すると信じられるようになった。
羅刹国を参照のこと。

仏教の鬼

生前に貪欲であった者は、死後に餓鬼道におち、餓鬼となるとされている。

また、地獄で閻魔の配下として、鬼が獄卒の役を務めているとされる。

鬼と人

人に化けて、人を襲う鬼の話が伝わる一方で、憎しみや嫉妬の念が満ちて人が鬼に変化したとする話もある。
代表的な例としては、能の「鉄輪」や「紅葉狩 (能)」に、嫉妬心から鬼と化した女性の話が伝わっている。
「般若の面」はその典型である。

具体的な鬼(または鬼とされた人間)

名のある鬼は「童子」と呼ばれることが多い。

酒呑童子(しゅてんどうじ)

茨木童子(いばらきどうじ)

紅葉伝説(もみじ)

鬼ノ城(うら)

黒塚(あだちがはらのおにばば)

鈴鹿御前(すずかごぜん)

大嶽丸(おおたけまる)

悪路王(あくじおう/あくろおう)

橋姫(うじのはしひめ)

両面宿儺(りょうめんすくな)

牛頭馬頭(ごずめず)

速疾鬼(そくしつき)

など

鬼と関わりの深い地
大江山 酒呑童子が住んでいたとされる。
麓の京都府大江町 (京都府)(現・福知山市)は、「鬼の里」との町おこしで有名。

伊吹山
鬼住山,笹苞山 鳥取県伯耆町に残る日本最古の鬼伝説の舞台。

岩手県北上市
大分県中津市 同市の宝山大剰院に鬼のミイラらしきものがある。

安久美神戸神明社 愛知県豊橋市にある神明神社。
天下の奇祭と呼ばれる国指定重要無形民俗文化財の鬼祭が行われる。

この他、日本全国に形を変えて鬼の伝承が伝わっている。

中国における「鬼」

中国で鬼(グウェイ)という場合、死霊、死者の霊魂中国の宗教(道教など)のことを指す。
日本で言う「亡霊」の方がニュアンスとして近い。
中国では、直接鬼と呼ぶのはタブーであることから、婉曲して好兄弟ともいう。
また日本にもこの思想が入っており、人が死ぬことを指して「鬼籍に入る」などと言う言い方がある他、元来の意味合いと混交したイメージでも捉えられている。

従って、中国語で「鬼-」と言う表現は、必ずしも勇猛等を意味しない。
戦前の日本軍で、ある将官が「鬼将軍」と渾名され、当人は軍人として誇りにしていたが、実はその痩せた風貌を揶揄したものであったというエピソードがこれを物語る。
文禄・慶長の役の際、島津義弘の率いる軍勢を明軍は「鬼石曼子」と言って恐れたとの逸話においても「鬼」はその勇猛さよりも、つまらない奴や忌々しい奴という蔑視表現に使われる。
拝外意識により、欧米人を「洋鬼」と呼び、それに遅れて進出した日本人を「東洋鬼」と呼ぶのもこの類である。
また、かつて中国民衆が日本の総理大臣を「小泉小鬼」と呼ぶことがあったが、日本の総理を恐れるのではなく小馬鹿にする表現であった。

鬼から派生した用語
現象 鬼火
地名 鬼押出、鬼ヶ島、鬼ヶ城、鬼ヶ城山、鬼村
造形 鬼瓦
遊び 鬼ごっこ
生物 オニヤンマ
その他 多数

文学

童話などにも数多く登場し、多くは主人公に倒される。
代表的な例としては、一寸法師、桃太郎などがあげられる。
この鬼退治のモチーフは、古くから見られ、渡辺綱は酒呑童子など多くの鬼を退治したとされている。

近世になると、『泣いた赤鬼』(浜田廣介)や『おにたのぼうし』(あまんきみこ)など、鬼はただ悪いだけではなく、悪いとされているけれども優しい心を持つ者もいるという童話が見られるようになる。

『桃太郎』
『こぶとりじいさん』
『泣いた赤鬼』(浜田廣介)
『おにたのぼうし』(あまんきみこ)

童話の他では、架空の生物であるため、文学作品としてはファンタジーもしくはサイエンス・フィクション的なものに限定される。

「青鬼の褌を洗う女」「桜の森の満開の下」(坂口安吾)
『鬼』(中編集)(西村寿行)
『死にかた』(短編)(筒井康隆)

ライトノベル

『封殺鬼』(霜島ケイ)

漫画

虐げられた異形の存在としての鬼が登場する場合も多数ある。

永井豪作品。
あるいは非情・非論理的な暴力の象徴として、あるいは虐げられた異形の存在として、永井豪は鬼を作品の中心的存在として取り上げてきた。

『鬼-2889年の反乱-』
『手天童子』
ゲッターロボシリーズ
敵に百鬼帝国が登場。
もとから鬼だった者と人間から改造された者がいる。
また、OVA新ゲッターロボでも謎の敵として、鬼や巨大な鬼の姿をした鬼獣が登場する。

『鬼切丸』
『うる星やつら』(高橋留美子)
鬼の姿をした宇宙人の少女「ラム (うる星やつら)」が登場するが、あくまでも「鬼の姿をした宇宙人」である。

『地獄先生ぬ~べ~』
地獄の鬼が登場。
主人公の左手にも鬼が封じられており、これを用いて除霊などを行う。
悪と同時に強さの象徴でもある。

『遙かなる時空の中で』
鬼と呼ばれ差別されている者たちが登場する。
「金髪碧眼」が特徴のため、外国人に対する古代日本人の恐怖の念から来ているのであろう。

『ひぐらしのなく頃に』
『シャーマンキング』
『桃組+戦記』

実写・特撮

『百獣戦隊ガオレンジャー』
オルグ(鬼の英語名ogreから来ていると思われる)と呼ばれる敵が登場する。
それらは主に付喪神のようなコンセプトであり、また、ボス(ハイネスデューク)であるシュテン、ウラ、ラセツはそれぞれ酒呑童子、温羅、羅刹といった著名的な鬼の名前が使われている。

『仮面ライダー響鬼』
厳しい修行をつみ、変身能力を得た人間の事を鬼と呼ぶ。
この作品では鬼を善の存在に位置づけている。

『仮面ライダー電王』
主人公に憑依したイマジン(怪人)・モモタロスは、そのイメージにより『桃太郎』の赤鬼の姿となった。

アニメ

『おじゃる丸』
『地獄先生ぬ~べ~』
『ギャグマンガ日和』

楽曲

『赤鬼と青鬼のタンゴ』(尾藤イサオ)
日本放送協会『みんなのうた』で歌われた楽曲。

『鬼たいじ』(森高千里)
『古今東西〜鬼が出るか蛇が出るかツアー』では舞台に鬼が登場する演出がされた。

ジェスチャー
基本的に鬼は怖いものであり、また鬼の顔も怒った表情である事が多い為、誰か(第三者)が怒っているという事や、機嫌が悪いという事などを示す手段として、両手の人差し指を立てて、鬼の角に見立てて頭の上に掲げるジェスチャーが存在し、話し相手に(当人に気づかれない様に)その人とのトラブルに巻き込まれない様に、注意を促す目的で使用される事が多い。

[English Translation]