龍燈 (Dragon lantern (ryuto).)

龍燈、龍灯、竜灯(りゅうとう)とは、日本各地に伝わる怪火。
主に海中より出現するもので、海上に浮かんでいくつもの火が連なったり、海岸の木などに留まるとされる。

概要

主に竜の住処といわれる海や河川の淵から現れる怪火。
龍神の灯す火の意味で龍燈と呼ばれ、神聖視されている。

日本各地で見られるが、特に広島県の厳島神社から見えたという龍燈がよく知られる。
旧暦の元旦から6日頃まで、静かな夜に社前の海上に現れたというもので、最初に1個現れた火が次第に数を増して50個ほどになり、それらが集まってまた1個に戻り、明け方に消え去るという。
厳島には夜に多くの人がこれを見物し、特に島の最高峰である弥山 (広島県)からよく見えたという。
龍燈の名は、厳島神社で祀られている厳島明神が海神のために龍宮にちなんで名づけられたともいう。

また磐城国(現・福島県)も出没地として知られている。
磐城国の閼伽岳山頂の寺から東を見ると、4,5里(約16-20キロメートル)の彼方に海が見え、日暮れの頃、海上の高さ約1丈(約3メートル)の空中に提灯か花火の玉のような赤い怪火の出没する様子がよく見えるという。
毎晩7,8個現れるが、必ず2個ずつ対になって現れる。
1個目の龍燈が現れて3,4町(約327-436メートル)ほど宙を漂った後、2個目の龍燈が現れ、1個目の軌跡を沿って宙を漂うという。

寛保時代の雑書『諸国里人談』では、他にも龍燈が寺に火を献じる例が紹介されている。
周防国(現・山口県)上庄熊野権現には大晦日に龍燈が現れるという。
丹後国(現・京都府北部)の天橋立には文殊堂に「龍灯の松」と呼ばれる一本松があり、毎月16日の夜中、沖から龍燈が飛来してこの松に神火を灯すという。

龍燈の灯るとされる松や杉の伝承は日本各地に存在する。
橘南谿による江戸時代の紀行文『東遊記』によれば、越中国(現・富山県)では中新川郡の眼目山立山寺という寺で毎年7月13日、立山の頂上と海中から1つずつ龍燈が飛来して梢に火を灯すといい、これを山灯竜灯と称するという。
その昔、道元の弟子の1人・大徹禅師がこの寺を開いた際、山の神と龍神が協力して神火を寺に献じることになったといわれるもので、極めて稀なものとされている。
ほかの地方の多くの松や杉についても、龍神が寺社に神火を献じているといわれる。

大阪府では沖龍灯と呼ばれ、魚たちが龍を祀るために灯す火と言われている。

新潟県佐渡島新穂村(現・佐渡市)の伝説では、根本寺の梅の木に毎晩のように龍燈が飛来しており、ある者が弓矢で射たところ、正体はサギであったという。

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