奥入 (Okuiri)

奥入(おくいり)とは、藤原定家によって著された源氏物語の注釈書である。
1233年(天福元年)頃の成立とみられる。
源氏物語の注釈書としては最古とされる「源氏釈」に次いで古いものであり、後世重要視された。
全1巻。

概要

もともと藤原定家は証本として自ら作成した源氏物語の写本の本文の末尾にさまざまな注釈を書き付けている。

「奥入」の名もそれに由来する。
現在でも巻ごとの末尾にこの「奥入」を持つ写本は数多く存在している。
池田亀鑑は源氏物語の写本にこの「奥入」があるかどうかを写本が藤原定家の証本の流れを汲む青表紙本であるかどうかを判断する条件に挙げている。

藤原定家が写本を貸し出した際にこれらの注釈を勝手に書き写されて世間に流れ出し、さらにその見解に対して批判を加えられたりした。

そのことから、これを写本から切り取り1冊の本にした。
その際歌などの本文の一部が失われたという。

奥入には大島本や明融臨模本に書かれている「第一次奥入」(第一次本)と定家自筆本に書かれている「第二次奥入」(第二次本)とがある。
第一次本よりも第二次本のほうが概ね詳細な内容になっている。
どちらが先に成立したのかについては第一次本を先とする説と第二次本を先とする説の両方がある。

奥入では先行する注釈である「源氏釈」を重要視しており、多くの項目でその見解を引用している。
源氏釈の見解にそのまま従っていることが多いがすべて従っているわけではない。
批判を加えている場合も存在する。

[English Translation]