スルッとkansai (THRU Surutto KANSAI (KANSAI PASS))

スルッとKANSAI(するっとかんさい)とは、関西(近畿地方)の公共交通機関の乗車カードのネットワーク、または大阪府大阪市に本社を置くその協議会の筆頭会社である。
筆頭会社の正式な商号は株式会社スルッとKANSAIである。

スルッとKANSAIはシステムの名称であり、カードの名称は発行社局により異なる。

概要

1992年4月1日、阪急電鉄がそれまで乗車券購入や運賃精算用として販売していたラガールカードを用いたストアードフェアシステム「ラガールスルー」の運用を開始し、1994年には能勢電鉄が自社のパストラルカードとラガールカードを共通化する形で参加。
そしてこれを当時自動改札機の更新を予定していた阪神電気鉄道、大阪市交通局、北大阪急行電鉄の3社局にも拡張対応させ、1996年3月20日から「スルッとKANSAI」の統一名称を用いての運用を開始した。

当初、スルッとKANSAIに関わる業務は加盟各社局が分担して行っていたが、加盟社局の増加とともに業務の効率化を図るため、専任事務局として株式会社スルッとカンサイが2000年7月18日に設立された。

スルッとKANSAIではプリペイドカードの提携のみにとどまらず、各種チケットや、グッズ制作販売会社とともに加盟各社のグッズなどの企画を行い、各社主要駅などでバンダイや明治製菓などと共同で企画した玩具やチューインガムなどを販売している。
また、切符の台紙などの資材の一括調達も行っている(ただし、入札によることが要求される公営交通機関については一括調達は行われていない)。
共同企画の玩具やコンパクトディスクやバンダイから発売されているBトレインショーティーの限定版は、基本的に一度販売されれば、再販しない方式を貫いているため、多くの関西在住の鉄道ファンなどからも再販と増販と販売制限撤廃と予約販売を求める声が多い(Bトレインショーティーの場合、南海電気鉄道が2005年11月・2007年9月、阪急電鉄・京阪電気鉄道・山陽電気鉄道が2007年6月~8月に2008年1月には大阪市交通局が、同年3月には近畿日本鉄道が其々一般販売用にアレンジして発売した)。

2004年からは非接触型ICカード「PiTaPa」が導入された。
これによりスルッとKANSAI協議会には関西の交通事業者だけではなく、岡山県や静岡県の交通事業者も加盟して「PiTaPa」を導入するようになった。
また「PiTaPa」は電子マネーとしても利用できることから百貨店や地方公共団体なども参加している(参加事業者・導入時期はPiTaPaのページを参照のこと)。

磁気乗車券としての「スルッとKANSAI」は近畿地方全域(京阪神地区)の交通事業者で利用できるとされているが、使用できない範囲もバス路線を中心に多い。
滋賀県では京阪京津線と比叡山鉄道、(坂本ケーブル)、京阪宇治バスで大津市内と京都バス比良線の高島市内のみ。
京阪石山坂本線(2007年4月1日よりPiTaPaを導入)や滋賀県内の主要交通事業者である西武グループ系の近江鉄道グループ(鉄道、バスとも)、京阪グループの江若交通、独立系の帝産湖南交通、滋賀交通などは加盟しておらず(協議会すら参加していない)、滋賀県内においてスルッとKANSAIが普及しているとは言いがたい(京阪バスも滋賀県内で運行しているが、滋賀県内の路線を管轄する営業所では一部を除き導入していないため使用できない)。
この点、滋賀県内の西日本旅客鉄道(JR西日本)の駅でも広く利用できるJスルーやICOCAと対照的である(ただし、滋賀県内でJスルーカードやICOCAが使えるバス事業者もない)。

また奈良県・兵庫県のバス事業者でシェアの大きい奈良交通や神姫バスでは使用できない(ただし、両社とも協議会には加盟しており、ICカードPiTaPaを介した共通化が図られている)。
京都市内のヤサカバス、南大阪地区の阪堺電気軌道(南海系)、中日臨海バス、金剛自動車、日本城タクシーや播磨地区の姫路市企業局交通事業部、明石市交通部での使用はできず、協議会自体にも参加していない(ただし明石市交通局に関してはJスルーカードは利用可能)。
水間鉄道、京阪京都交通についてはスルッとKANSAIへの加盟が決定し2007年秋開催のスルッとKANSAIのイベントに参加している(京阪京都交通は2008年3月1日から「PiTaPa」と同時に導入、水間鉄道・バスに関しては導入時期は未定)。

一方和歌山県では、南海グループの和歌山バス那賀(特殊路線を除く)、和歌山バス、南海りんかんバス(ただし高野山駅発着の急行バスを除く)で導入している。
和歌山電鐵(旧南海貴志川線)や和歌山バスの路線の南限である海南市以南の交通機関では一切使用できない。
一方自治体などが自主運行するコミュニティバスに関しては、委託業者によって利用できるところとできないところがある。
また空港へのリムジンバスに関しては大阪空港交通の川西線のみ利用可能である(大阪空港発着の各路線は大阪空港交通の運行便に限りPiTaPaが導入されている。
関西国際空港発着便は依然利用できない)。

なお2006年3月31日に京阪宇治交通とその子会社である京阪宇治交通田辺は京阪バスに吸収合併され、スルッとKANSAI協議会から脱退した。
加盟会社の脱退はこれが初めての事例である。

PASMOとの背景の違い

「大都市圏内の私鉄各線で共通で利用できる」という点がスルッとKANSAIと共通している関東圏のパスネットは、そのICカード版であるPASMOが登場してから1年足らずの2008年1月に発売を停止したが、スルッとKANSAIはそのICカード版と位置づけられたPiTaPaがサービスを開始して2008年現在で4年が経過しているにも関わらず、発売停止になる予定は全く無い。
これは、PiTaPaがポストペイ(後払い)というシステムを取っているため、カードの発行に際しクレジットカードのように審査が必要(但し公表されてはいないものの、クレジットカードとは別の審査基準となっている)である一方、PASMOの場合は無条件・無記名で購入できるカードのため、カードを持てない人やクレジットカードを嫌う層に一定の需要があるためである。
またスルッとKANSAIを導入している事業者でも経営面が首都圏と比べると一段と厳しいためにバス会社を中心にICカードを導入する目処が立っていない業者も多い一面もある。

また利用者の声を受けて、近鉄などでは駅構内にスルッとKANSAIだけを発売する専用の自動券売機を設置したり大阪線(大和八木以西)橿原線・京都線等の特急車内で車掌がJスルーカードとともに販売を行ったり、阪急に至っては主要駅の構内に専用のブースを設け、駅係員が自ら販売するなど、PASMOが登場してから段階的に販売規模を縮小したパスネットとは対照的に積極的に販売活動を行っている。
(相互利用によりICOCAも使用可能になったが、告知不足によりICOCAで私鉄に乗れることを知っている人が少なかったり、ICOCAへチャージできる自動券売機やICOCAで乗り越し精算ができる自動精算機が少なかったりと、JR線内より使い勝手が悪いとの声もある)ちなみに、金券ショップでは、実発売額より安価(1000円のカードが990円など)で売られていることがあるので、金券ショップで購入すればPiTaPaやICOCAよりわずかな差ではあるが安く乗車できる。

目的

スルッとKANSAIの目的は以下の通りである。

乗車用プリペイドカードを導入し、別途乗車券(切符)を買わなくても乗車できるようにする。

乗車用プリペイドカードと乗車券購入用のプリペイドカードに同じものを使えるようにする。

乗車用及び乗車券購入用プリペイドカードを、スルッとKANSAI参加社局間では共通に使えるようにする。

このことにより、加盟社局がカバーするエリアの乗客は、スルッとKANSAI加盟社局が発行した「スルッとKANSAI」ロゴ入りプリペイドカードさえ持てば、複数の交通機関で共通の「金券 兼 切符」として使用することができる。

額面

スルッとKANSAI対応カードの発売額面は、以下の通りである。
なお、社局によっては取り扱いのない額面がある。
また、いずれのカードも有効期限は設定されていない。

大人用カード

500円

1,000円

2,000円

3,000円

5,000円

小人用カード

500円

1,000円

1,500円

2,000円

2,500円

特別割引カード

購入には身体障害または療育手帳の提示を要する。

大人用カード

1,000円

1,500円

小児用カード

500円

750円

チケット

スルッとKANSAI協議会加盟社局で利用することのできる周遊券が発売されている。
ただし、チケットによって利用可能な社局やエリアが限定される場合がある。

スルッとKANSAI 3dayチケット(全国通年発売版)

連続する3日間乗り放題、かつ指定された施設で割引などの特典を受けられる。
大人5,000円(1667円/日)・小児2,500円。
通年発売であるが有効期間があるので購入・使用の際には注意が必要である。
旅行代理店など(近畿と三重県を除く)でクーポン券を購入し、エリア内の引換場所で交換する。
直接購入できるチケット発売場所もある。

このチケットは海外でも発売されており、近年日本への観光客が増加している大韓民国では非常に好評である。
払い戻しは不可である。

スルッとKANSAI 3dayチケット(全国通年発売版)

かつては連続する2日間のみ有効であったが、現在発売中のものは連続していなくてもよく、任意の2日間乗り放題で、かつ指定された施設で割引などの特典を受けられる。
大人3,800円(1900円/日)・小児1,900円。
3dayチケットと同様、通年発売であるが有効期限があるので購入・使用の際には注意が必要である。
発売方法は3dayチケット(全国通年発売版)と同じ。
払い戻しは不可である。

スルッとKANSAI 3dayチケット(関西駅売限定版)

任意の(連続していなくても可)3日の乗り放題、かつ指定された施設で割引などの特典を受けられる。
大人5,000円(1667円/日)・小児2,500円。
春・夏・秋のシーズンのみの発売で、利用日が限定されている。
加盟社局の主要駅などで発売。
払い戻しは、すべてそろった状態で有効期間内に発行社局で手数料を支払うことで可能である。

2dayチケット・3dayチケットでは従来の利用範囲のほかにも京阪石山坂本線や京阪バスの大津地区など若干だが利用範囲が広がる。
一方で各バス会社が受託運行する地方自治体のコミュニティバスには制約がある。

大阪周遊パス

大阪市交通局の地下鉄・大阪市交通局南港ポートタウン線・路線バスと大阪市内エリア(堺市と尼崎市の一部も含む)の電車・バス・に1日乗り放題。
25施設にそれぞれ1回まで入場無料、そのほか施設、店舗割引が利用できる。
2,000円(大阪エリア版、大人のみ)。
通年発売。
加盟社局のフリー区間を加えたエリア拡大版(2,200円から)もある。
さらに海遊館の入場券も組み込まれた「大阪海遊パス」も発売されている。

神戸観光1dayクーポン

神戸エリアの電車とバスに1日乗り放題と神戸市内の観光施設で利用できる1,000円分の「神戸街遊券」がセットになっている。
2,000円(大人のみ)。
春・夏版(4~9月)、秋・冬版(10~3月)の発売。
ほかに阪急電鉄・阪神電気鉄道・山陽電気鉄道・神鉄拡大版も発売されている。
また冬季を中心に「有馬温泉 太閤の湯」の入場料が組み込まれた「有馬温泉ゆけむりチケット」が発売されることもある。

上記の切符以外にもスルッとKANSAI協議会加盟各社では時季によって企画ものとして、2社局以上を跨ぐフリー切符が発売されている。

システム

スルッとKANSAI用のプリペイドカードは、縦85mm×横57.5mm(日本鉄道技術協会)厚さ約0.3mmのポリエステル製で、テレホンカードよりわずかに横方向に大きい(磁気定期券と同じ大きさ)カードである。

情報は磁性で記録されており、カードリーダーや自動改札機(※専用の機種)で書き換えることができる。
裏面の印字(感熱皮膜破壊、または感熱発色方式)もカードリーダーや自動改札機で追記することができる。

発売されたカードには一定の金額に相当する度数が書き込まれており、出札機や改札機に通して乗車や乗車券購入に使用する度に、必要金額に相当する度数を減算されたデータに書き換えられる。

使用した度数を視認できるよう、カード使用時に支出状況を裏面に21回まで追記で印字していくようになっている。
追記される内容は、社局名、使用した駅・車両、使用目的(乗車区間あるいは乗車券購入など)、日時、残額、などである。
印字が満杯になった場合はカードを発売する券売機に挿入すると残額を引き継いだ新しいカードが再発行される(元のカードには最終残額表示に二重取り消し線が上書きされ、残額情報が0円の状態で返却される)。

また南海電気鉄道では、有料特急の特別急行券を購入することができる(一部の窓口及び車内を除く)。

現行のシステムでは、度数がなくなったカードを(追加支払いで度数を購入するなどで)再利用するサービスは想定されておらず、各カードは基本的に使い切りである。
但し、使い切ったカードはそのままゴミ箱行きにするのではなく、各駅の回収箱に投函することにより回収され、海外のカードコレクターに販売されている。

関東地方のパスネットや中部地方のトランパス (交通プリペイドカード)などはカード残額が初乗り運賃に満たない場合、そのカードで入場できないが、スルッとKANSAIの各カードは残額が10円でもあれば改札を通ることができ、降車の際に乗り越し精算すればよいということになっている。

これについては、パスネットやトランパスでは、鉄道営業法第29条ノ1にある「有効ノ乗車券ナクシテ乗車シタルトキ(=有効な乗車券を持たずに乗車したとき)」(ここでは初乗り運賃に満たない時)に「鉄道係員ノ許諾ヲ受ケスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ50円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス(=鉄道係員の許諾を受けないで左記の行為を行った者は50円以下~実際は1万円以上2万円以下~の罰金または科料に処する)」という条文に則っているためだが、スルッとKANSAIを含む関西の鉄道事業者が発行するカード(JR西日本のJスルーを含む)では、これを国土交通省に届け出て「特例扱い」(鉄道係員の許諾を受けている)としているため、カード残額が初乗り運賃に満たなくても入場可能となっている。
利用者からすれば、残額が初乗り運賃未満のカードを所有していたとしてもそのまま乗車することが可能であり、特に発車間際の場合には有利になりえる(もっとも駆け込み乗車は危険なので自重されたし)。
関東、関西いずれの方式にしろ、不正乗車の手助けになることはないのであるから、スルッとKANSAIやJスルーカードを中心とした関西事業者系カードは、利用者の視点に立った取り扱いを採用したといえる。

導入事業者・発行カード一覧

導入日はその事業者の路線でスルッとKANSAI対応プリペイドカードが利用可能になった最初の日。
その日以前にも既に3dayチケットなどに限って利用可能であった事業者・路線もある。

漢字略号は、乗車駅の社局名としてカード裏面に印字される文字。

英字略号は、降車駅の社局名としてカード裏面に印字される文字。
―は、設定がないことを示す。

鉄道利用時は、乗車時および券売機・精算機等利用時は、社局名漢字略号に続いて駅名が3文字で、降車時は社局名英字略号に続いて駅名が2文字で印字される。

バス利用時は、社局名印字に続いて最大4桁の数字(英字の場合もある)が表示される。

ICカード「PiTaPa」導入事業者・路線についてはPiTaPaを参照のこと。

鉄道

※1 大阪港トランスポートシステム

2005年7月1日より路線が大阪市交通局に編入されている。

※2 南海電気鉄道

和歌山電鐵貴志川線では使用できなかった(同線は2006年4月1日より和歌山電鐵に譲渡)

※3 京阪電気鉄道

京阪石山坂本線では使用できない(PiTaPaは同線を含めて使用可)

※4 近畿日本鉄道

青山町駅以西でのみ使用できる(近鉄田原本線・近鉄道明寺線・近鉄吉野線市尾駅~吉野駅 (奈良県)間・各ケーブルカー除く。
ただし、エリア外の一部の駅でもスルッとKANSAIカードを使用して券売機で切符の購入ができる(PiTaPaは近鉄内部線・近鉄八王子線・近鉄志摩線を除くこれらの路線および志摩線の一部の駅も含めて使用できる)。
青山町駅以西のエリアに入っていた伊賀鉄道伊賀線では使用できなかった(同線は2007年10月1日に伊賀鉄道に運営移管)。

※5 京福電気鉄道(嵐電)

駅改札口で印字したものに限られる。
車内のカード読み取り機では、バス式の印字になり「京福電鉄」と表示される。

※6 比叡山鉄道(比叡山坂本ケーブル)

駅改札口に設置したカード読み取り機でバス式の印字が行われ、「比叡山」と表示される。

※7 叡山電鉄

車内のカード読み取り機で印字した場合でも、鉄道式の印字となる。

バス

※1 大阪市営バス

赤バス乗車時の印字は「大交BUS」となる。

※2 大阪空港交通

川西線のみ(ただしPiTaPaでは関空方面の絡む路線以外は利用可)。

※3 南海ウイングバス南部・和歌山バス那賀

樽井岩出線は利用不可。

※4 京阪バス

大津営業所管内・コミュニティバスは利用不可(ただし大津地区は3dayチケットは利用可)。

※5 京阪宇治交通・京阪宇治交通田辺

2006年4月1日より京阪バスに吸収合併された。

※6 神戸交通振興

山手線のみ利用可。

※7 京阪京都交通・京阪宇治バス

立命館大学 (BKC) 線は利用不可。

なお、各社とも高速バスや定期観光バスでは利用できない。
また、深夜急行バスでは南海バス(深夜急行バス (南海バス))に限り利用可(ただし3dayチケットは利用不可)。

近鉄の加入までの経緯

近鉄は以下の理由で参加が遅かった。

ストアードフェアシステムを導入するにはコストがかかりすぎ、増収効果では追いつかないこと。

自動改札機の投資が膨大

自動券売機などの投資も膨大

既に導入していたプリペイドカード「パールカード」とサイズ以外の規格が全く異なり、自動券売機なども全面改修が必要となった。

JRとの共同使用駅・JRへの鉄道駅が多数存在

JRに委託:柏原駅 (大阪府)、吉野口駅、伊賀上野駅(当時・現在は伊賀鉄道)

ノーラッチ接続:(上記に加え)桜井駅 (奈良県)(当時)、桑名駅、津駅、松阪駅、伊勢市駅

連絡改札口:鶴橋駅、京都駅(当時)など

近鉄自身、あまり必要性がなかった

既にJR西日本との競合にさらされていた阪急・南海などの他の関西私鉄に比べて、JR西日本との競合路線はそれほど多くなかった。

後にJスルーを共同で発行しているように、上記共同使用駅の問題もあった。

ストアードフェアシステムそのものによる旅客増しか増収要因にはならないが、投資額に見合うほどは期待できない

以上の理由により、当時の近鉄ではストアードフェア導入には消極的であった。

一方、スルッとKANSAI側でも、近鉄の路線エリアがあまりにも広大すぎることはネックとなった。
すなわち、300駅を超える近鉄の駅データを追加し、近鉄の複雑な運賃制度がシステムの大きな負担となることが懸念された。
また全駅自動改札設置を各社の参加条件としていたこともある。

さらに近鉄には、乗車券の経路が指定されて大回り乗車ができないことや、長距離乗車券の2日間有効制度、途中下車制度など、ストアードフェアシステム導入に支障のある制度があったことも障害となった。

しかし、その後以下のように状況に変化があり、近鉄もストアードフェアシステム導入を行った。

定期乗車券の不正乗車防止システムの開発により、自動改札機投資に対する増収額が大幅に増加した。

2枚対応自動改札機が開発され、鶴橋駅JR連絡改札の問題が解消された。

乗降客の減少により自動改札機の必要台数が減り、投資額が減少した。

この後、近鉄は近鉄田原本線利用時を除く乗車券の経路指定や長距離乗車券の2日間有効制度、途中下車制度を廃止し、スルッとKANSAI側も自動改札機全駅設置を条件とせず、近鉄の加盟が実現した。

[English Translation]