日本のタクシー (Taxis in Japan)

日本のタクシー(にっぽんのタクシー)では、日本におけるタクシーについての事情などについて記述する。

法的定義など

日本においてタクシー事業は、道路運送法上の「一般乗用旅客自動車運送事業」である。

第3条第1号「一般旅客自動車運送事業(特定旅客自動車運送事業以外の旅客自動車運送事業)」
(ハ)一般乗用旅客自動車運送事業(一個の契約により乗車定員10人以下の自動車を貸し切つて旅客を運送する一般旅客自動車運送事業)
事業用自動車を示す緑地に白字、3ナンバー又は5ナンバーのナンバープレート (日本)がつけられる。
自家用自動車を用いて無資格で営業しているものは白タクと呼ばれ、違法である。
この呼び方はナンバープレートの色が事業用車のそれに対して白地緑文字であることに由来する。

この他、タクシー業務適正化特別措置法、旅客自動車運送事業運輸規則、一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款などの法令の適用を受ける。

歴史

日本では1912年7月10日、東京市有楽町にタクシー自働車株式会社が設立され、8月5日から本社前でフォード・モデルTを6台使用して旅客営業を開始した。
これが日本における、自動車を使用したタクシーの最初の営業であった。
このタクシーはタクシーメーターを搭載して「辻待ち自動車」と呼ばれており、上野駅と新橋駅を拠点に営業していた。
料金は最初の1マイルが60銭、以後1マイル毎に10銭増しであった。
その後、1914年には東京駅が開業したことにより、同社によって東京駅でも営業が行われるようになった。

1960年代にはモータリゼーションの発達により、「神風タクシー」が問題となる。

2002年2月1日に道路運送法・タクシー業務適正化臨時措置法の一部が改正施行され、事業はこれまでの免許制から許可制とし、事業者の車両数増減も届出のみで自由に可能になった(いわゆる「タクシー規制緩和」とはこれらの法改正を指す)。
これにより大都市では新規参入事業者が増加している反面、既存の中小事業者は地方・大都市の別を問わず、マイカーの普及や公共交通網の拡充、社会事情の変化などによる乗客の減少に加え、業務の性質そのものが収入を増やせず支出を減らせないため、構造的な業績不良に陥り、経営の苦しいところが多い。
また、売り上げを上げるため労働者に過大な負担がかかるようになってきていることも問題視されている。

1912年(大正元年)8月15日東京市の上野駅前・新橋駅前で営業開始。

1914年(大正3年)東京駅開業とともに駅構内営業開始。
タクシー自働車株式会社による。

1924年(大正13)年6月27日大阪、1926(大正15)年6月10日東京で、市内1円均一タクシー(通称円タク)が登場。

1945年(昭和20年)迄の間、全国各地で政府勧奨による企業統合が行われる。
(いわゆる戦時統合)

各地区の大手タクシー会社は概ねこの時期に成立。
東京では三度に分けて企業合同が行われた結果、大和自動車交通・日本交通 (東京都)・帝都自動車交通・国際自動車の4社に集約され、また大阪では相互タクシー・澤タクシー(現:日本交通 (大阪))・信興タクシー(現:三菱タクシー)・大阪交通(現:国際興業大阪)・都島自動車の5社に、名古屋は名鉄交通(名タク)・東和交通・名古屋相互交通(現:第一交通産業)の3社に、横浜・川崎は東横タクシー(現:神奈川都市交通)に、神戸は神姫合同自動車(現:神姫バス)・神戸タクシー(現在の国際興業神戸)の2社にそれぞれ集約された。

1949年戦時統合以外の新規免許取得会社が登場。

1953年10月13日札幌にて日本初のタクシー無線が運用開始。

1959年12月3日東京都区部で個人タクシー営業が許可され173人に初免許交付。
1960年1月15日には大阪市、同3月1日名古屋市へと全国に免許区域拡大する等個人タクシー復活。
(「個人タクシーの日」)

1969年財団法人東京タクシー近代化センター(東京都23特別区と武蔵野市、三鷹市を管理)と財団法人大阪タクシー近代化センター(大阪市、門真市、守口市、豊中市、吹田市、茨木市、高槻市、堺市、和泉市などを管理)が開設。

2002年東京タクシー近代化センターが「東京タクシーセンター」に、大阪タクシー近代化センターが「大阪タクシーセンター」に改称。

2008年東京新橋駅前にて、優良タクシー(10年間クレームなし・過去3年無事故無違反)の専用乗り場が設置される。

タクシーの形態

介護・福祉タクシー

タクシーの利点の一つが「旅客をドアtoドアで輸送できる」という点である。
昨今この利点を活かして、身体障害者や高齢者など、移動に大きな制約を伴う人々を対象にするタクシー事業者が増加した。
中には、運転手にホームヘルパー、救命講習などの公的資格を取得させている事業者もある。
車椅子を積載できるタクシーには8ナンバーの特種用途自動車の登録となっているものもある。

本業がタクシーではない介護事業者(特に訪問介護・居宅介護事業者)が、介護サービスの利用者を病院などへ移送することを目的に、一般乗用旅客自動車運送事業(患者等輸送限定)という種別の許可を受けることも多くなってきている(「介護タクシー」)。
このうち、介護保険や支援費制度を適用しない場合をケア輸送サービス、適用する場合(通院等乗降介助)を介護輸送サービスといい、運賃の収受方法に差がある。

道路運送法第80条を拡大解釈し、普通二種運転免許を持たずとも陸運局の認可を受ければ旅客を有償運送できる、いわゆる「80条許可車両」(詳細は廃止代替バス80条バス参照)があるが、タクシー業界から「完全な白タクではないか」との強い異議が国土交通省に寄せられ、厚生労働省との折衝で現時点ではなんとか折り合いがつけられている状態である。

地域防犯・防災の役割を担うタクシー

タクシーには「24時間365日、地域内のあらゆる場所を走行し、無線により連絡手段を確保している」という特性がある。
この特性を活かして、非常時には警察無線とも連絡を取り合う体制を築いている地域もある(犯人が犯行後タクシーを使用して逃走した疑いがある場合は暗号による一斉手配が無線で流れる)。
また、乗務員に警備員などの資格を取得させている事業者もある。

運転代行業

タクシー事業者が運転代行業を兼業する例は古くから地方で数多く存在するが、タクシー事業の多角化に加えて、2004年の法改正によりタクシー同様第二種運転免許を取得した者でなければ代行運転に従事できなくなった(法律自体は2002年に施行されたが、二種免許義務化は2年間の猶予期間が設けられていた)ため、運転代行業に参入するタクシー事業者がさらに急増している。

詳細運転代行参照

荷物の運搬

人ではなく、コンピュータなどの保守用部品、データメディアなど、近距離の小物の輸送を引き受けているタクシー事業者もある。
(バイク便、あるいは全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会などと似た使い方であるが、タクシーは旅客運送事業であり、貨物運送事業を行うことは道路運送法上違法である)

以上のほかにも、日用品の買い物代行や、子供の幼稚園や小学校への送迎など、様々な種類のユニークな事業があり、最近では同じタクシー事業といえども地域や事業者により、多角化の方向を示しているといえる。

タクシーの利用方法

鉄道駅、空港、港、百貨店、観光地、繁華街、病院などにはタクシー乗り場が設けられており、順番に並んで乗車する。
ただしタクシー車両を選ぶのは基本的に客の自由であり、「先頭の車両にお乗りください。」と注意すると乗車拒否扱いされる場合がある。
なお一部では、特定の事業者に属するタクシー専用の乗り場がある場合もある。
タクシー乗り場には、入構するタクシー事業者がその施設所有者へ施設使用料を支払いタクシーの構内権なる権利を購入している場合がある。
また、主要都市の市街地では、フロントガラスから見えるように「空車」のプレートをダッシュボードに掲げて走っている(流し)タクシーに対して手をあげたら停車するので乗車すればよい(なお一部テレビドラマ等で散見されるが、「タクシー!」などと叫ぶ必要はない。そもそも声を上げても運転手には聞こえない)。
夜間の場合はプレートが見づらいことから、プレートの代わりに車上の社名表示灯が点灯しているか否かで区別できる地域もある。
最近はほとんどの車両で電光式の「空車」「迎車」「予約車」「回送」「賃走」「割増」「支払」などの表示がされており、プレート表示は減っている。

各家や会社などに電話をして迎えに来てもらうこともできるが、その場合は迎車料金がかかる(無料の場合もある)。
地方においては、流し営業を行わず、ほとんどが呼び出しまたはタクシー乗り場での乗車という地域も多い(しかし、走行しているタクシーが空車であった場合、手を上げれば乗り込めることは都市部と変わらない)。

タクシーは自動で(一部タクシー会社は乗務員が後方に回り込んで開ける)後方左側のドアを開ける場合が多いので、客は自分で開ける必要はない。
後方左側以外のドアは自動では開かないので客が開ける(ただし、タクシー乗り場によっては左回りの一方通行になっている関係で後方右側から乗り降りする場合もある)。
なお、ドアを客があける必要の無いのは日本以外にはほとんどなく、日本を旅する外国人は驚くことが多い(日本旅行向けガイドブックに紹介されていることがある。逆に日本人が外国でタクシーに乗ろうとするときは、ドアは開かないので注意)。

タクシーに乗り込んだら行き先を告げる。
走り出すときに乗務員が運賃メーターをセットする(スタートさせる)ことにより料金計算が始まる。
ただし、電話などで呼び出し迎車で進行してきた場合、既に基本料金分のメーターが作動している場合もある。
いずれの場合も、一定の走行距離か乗車時間(但し途中でタクシーを待たせて車から離れても乗車時間としてカウントされる)、もしくはその双方で運賃は算定(後述)され、同時にメーターに料金が表示される。
目的地につくと乗務員が運賃メーターを止めるので、そのときに表示された額に従って額を払う。
多くの場合、基本となるメーターの他に、ユニットといわれる支払額を示すメーターがついており、これに従って運賃料金を精算する。
これは、遠距離割引や迎車料金、予約料金等の、通常のメーター以外の割引や加算をした額を示すものである。
例外として、あらかじめ定められた定額の運賃による利用もある。
この場合、メーターによる運賃の収受ではなく、あらかじめ決められた運賃を支払えばよい。
なお、有料道路を利用した場合の通行料や、観光で利用するなどの際に有料駐車場を使用したときの駐車料金は、乗客が負担するものなので、メーター額のほかに支払わねばならない。

なお、信号待ちのときに乗車した場合は、多少車が前進しても、信号が青に代わって本格的に走り出すまではメーターをセットしない乗務員も多いが、そう決まっている訳ではなく、乗務員の心遣いか、トラブル防止といった意味合いによるものである。

また、降車で停車する直前にメーターが変わった場合、変わる前の料金で良いと言う乗務員もいるが、これもトラブル防止の意味合いが多く、また差額は乗務員の自己負担である。

但し、道路運送法第10条(運賃又は料金の割戻しの禁止)違反行為である。

精算方法としては、現金の他、チケット、クーポン、クレジットカードなどがある。
現金以外の場合は、使えるタクシー(事業者)が限られているので、よく確認して利用すべきである。
なお、特殊な利用方法として、後でタクシー会社からの請求に応じる約束で何も持たずに、あるいは名刺などをチケットの代わりとして利用される場合がある。

降りるときもまた左後方のドアが自動で開く。
客が降りるとドアが閉まるので客は閉める必要はない。
ただし、これは乗務員が客の動作や周囲の状況を確認し操作するものであり、一般的な意味での自動ドアとは違う。
近年では、油圧式で強く腕力を要しないものも増えてきたが、ワイヤーなどで乗務員の人力に頼るものも多く、意外な肉体作業である。
また、降車時に客がドアを閉めると、ワイヤー式やてこを利用したレバー式の場合、乗務員側のレバーも連動して動くため、乗務員の腕がレバーに挟まれる場合もあるので、ドアの開閉は乗務員に任せるべきである。
後方右側のドアは乗り逃げ防止のためチャイルドロックが掛けられていることが多い。

タクシーの運賃

タクシーの運賃はかつて、同一地域同一運賃制度に従い、原則として同じ地域では会社を問わず同じ運賃であったが、1993年にこの制度が廃止されている。
現在では、地域ごとに定められた金額を上限とする一定の範囲内であれば、各社の裁量により運賃を自由に決めることができる。
たとえば、2007年12月現在、東京都区部における一般的な普通車初乗り運賃は710円であるが、500円とする会社も見られる。
また、1997年には初乗距離短縮運賃制という制度が一部の会社で導入された。
これは、初乗り運賃を安くする代わりに初乗り運賃が適用される距離を短くするというもので、一定距離を走行すると通常の運賃と同額になるが、初乗り運賃の高さから敬遠されがちな短距離利用の促進を狙っている。

日本で初乗り運賃が一番安いタクシーは、石川県七尾市の港観光タクシーで、250円である。

また、徳島県の金比羅タクシーで初乗り運賃は260円 (中型車。大型車は280円) である。
原則予約制で運営するからこそ可能な料金である。
しかし、2008年8月4日、大型車を350円とする認可が降りた。

個人タクシーでは消費税法に基づく事業者免税点制度が適用されることから(売り上げが規定値以下のため)消費税の納税義務を免除されており、その分、個人タクシー「個人タクシー」と「法人タクシー」よりも運賃が安くなっている。

基本的な運賃料金システム

通常のタクシーの運賃・料金は以下のように構成される。

基本運賃

距離制運賃

初乗り運賃

乗車してから一定距離までは定額の運賃となる。
これを初乗り運賃という。

距離制運賃

一定距離を走行するごとに、一定額の運賃が加算される。
2002年の規制緩和以降、加算額は事業者が自由に設定できるようになった。
また地域によっては、高速道路に限り、距離制運賃だけの加算(次項に挙げる時間制運賃を適用しない加算)へ切り替えられるようにされている。
これは途中下車ができない高速道路上で渋滞にはまってしまい、運賃が上がり過ぎないようにするため。

時間制運賃

一定速度(時速10km)以下で走行していたり、停止していたりする間は、走行距離の代わりに経過時間を一定基準の計算法により距離に換算し、運賃が加算される。
このため走行経路が渋滞していると、移動距離の割に高額な運賃となってしまう。

時間制運賃

乗った時間だけで決まる運賃。
観光地周りなどの場合によく使われる。

定額制運賃

距離や時間にかかわらず決まっている運賃。
空港連絡の場合などに使われる。

貸切制運賃

時間、距離に関係なく、例えば、「乗務員の一日の売り上げで見込まれるであろう最低補償を客が“運賃”として負担することによって、乗務員と乗務員の運転する車を一日借り上げる」という方法。
常連客を抱える個人事業者に、たまに見られる。

割増・割引運賃

深夜割増運賃

22時(一部大都市圏では23時)から翌5時まで加算される運賃。
通常2~3割加算される。
この時間帯は、表示灯に青く「割増」と表示されることから「アオタン」とも言われる。

冬季割増運賃

北海道や東北、北陸信越地方などで、冬季の道路状況が劣悪になることに鑑みて、特定の地域を走行するタクシーにおいて、厳冬期間に限って終日加算される運賃。
通常2割加算される。

障害者割引

障害者は障害者手帳を提示することにより、地域にもよるがおおむね運賃が1割引となる場合が多い。

遠距離割引

一定距離以上を利用された場合、一定額が割り引かれる。

5000円以上の運賃の5割引(ゴーゴー運賃)や5000円以上3割引、9000円以上1割引など会社によって様々。
遠距離割引を採用していない法人・個人もある。

車種による運賃の違い

以上の運賃体系のほか、タクシーの車両は車種によりクラス分けがされており、クラスによって運賃が異なっている。
初乗り運賃だけでなく、運賃が加算される走行距離なども異なる。

概ね以下の4種類に分類されているが、この分類は必ずしも全国共通のものというわけではなく、特に大型車と特定大型車の区別がない地域や、これらと中型車を同一とする地域は多い。
分類方法が道路交通法と異なる事に注意。

特定大型車

普通自動車及び小型自動車で乗車定員7名以上の車。
ワゴン車・ワンボックス車を用いるジャンボタクシーなどはこれに該当する。
トヨタ・アルファード、日産・エルグランド、トヨタ・エスティマ(7人乗り)など。

大型車

普通自動車(3ナンバー車)で乗車定員6名以下の車。
日産・シーマ、日産・フーガ、トヨタ・センチュリー、トヨタ・セルシオ、トヨタ・クラウンマジェスタ、トヨタ・クラウン(ロイヤルシリーズ/アスリート)、トヨタ・マークX、ホンダ・レジェンドなど。
トヨタ・エスティマ(8人乗り)、日産・プレサージュやホンダ・オデッセイなどのミニバン(3列目シートは撤去、実質ステーションワゴンに近似している)もある。

中型車

小型自動車(5ナンバー車)のうち、自動車の長さが4.6メートル以上で乗車定員が6名以下の車。
トヨタ・クラウンセダン、トヨタ・クラウンコンフォート、日産・セドリック営業車など。
2000cc以下の3ナンバー車を含む場合もある。
かつて中型タクシーはコラムシフトを備えた前部座席がベンチシートの6人乗り(乗客は5人まで)の車種が主流であったが、現在ではクラウン(セダン、コンフォート共)に定員6名設定のモデルがなく、セドリックの一部に細々と残っているに過ぎない状況であることから、現在では中型タクシーのほとんどが5人乗り(乗客は4人まで)となっている。

小型車

小型自動車(5ナンバー車)のうち、自動車の長さが4.6メートル以下で乗車定員が5名以下の車。
トヨタ・コンフォート、日産・クルーなど。
日産・キューブやトヨタ・ファンカーゴなどの小型ワゴンもある。
かつては1980年代のマークIIなど、全長4.6メートル以上であっても1800ccクラスのエンジンを積む車種は小型車に分類されていた時代があった。

乗車定員には乗務員も含まれるため、実際に乗車できる乗客の数は乗車定員より1名少ない数となる。

地域により中型車の多い地域と、小型車の多い地域、中型車と小型車が半々程度の地域がある。
概ね首都圏・近畿圏・中京圏の三大都市圏は中型車が多いが、例外的に京都市や和歌山市では中型車と小型車が半々程度である。
また北海道・東北・北陸・四国・九州・沖縄では小型車が多い。

料金など

迎車料金
車を呼んだ場合にかかる料金。
最近では無料化する会社も増えつつあるが、東京の大手タクシー会社では2007年の料金改定と共に新たに設定している。

待料金
利用者の都合で待機している場合にかかる料金。
迎車料金無料の場合はこちらも無料。

その他
高速道路などの有料道路を通った場合、その通行料金を請求される。
客を降ろした後の戻りにもその有料道路を通らなければならない場合は往復の料金を請求されることもあり、拾った車がその戻りであった場合は料金を請求されない。

昔のタクシーはそのような設備が整っていなかったため、目的地まで運転手が料金を決めていた。

支払方法

現金
最も一般的な手段。
現金乗車を認めないタクシーはありえない。
ただ、安全面などの関係から、次項以降の現金以外の支払方法を拡充する方向にある。

チケット(タクシーチケット)
近年ではチケットをICカード化している場合もある。

タクシー会社または無線グループ、お得意先顧客、クレジットカード会社が発行する。
厳密にいえばチケットは金額欄を乗客が下車時に記入するもの(着服防止のため乗務員は記入できない)であるが、広義的には金額があらかじめ設定されたクーポン券や、地方自治体が発行する金額が決められた福祉チケットも含まれる。
有効期限があるものや、使用金額上限が設定されているものもある。

クレジットカード
カードを読み込む端末(インプリンタの場合もある)が装備された車両なら、利用制限を守っていれば使用できる。
ただし、前述のチケット発行会社と異なる(どちらかしか対応していない)場合もあるので注意。

デビットカード
金融機関の口座から直接料金を差し引いて支払う。
クレジットカード端末を装備している車両の一部で使用できるが、まだ普及率は低く、時間帯によっては利用できない場合がある。

会員カード
タクシー会社または無線グループがお得意先顧客(上客)に対し発行している。
クレジットカードと違い、タクシー乗車専用である他、有効期限内であれば使い放題である(タクシーチケットの変形とも言える)。

電子マネー
各種電子マネーカードまたは「電子マネー内蔵の携帯電話(おサイフケータイ)」を専用の支払端末にかざして非接触方式かつサイン等無しで料金を支払う。
2007年3月現在は都内の東京無線、チェッカーキャブ無線、中央無線、ANZENグループ、および愛媛県松山地区の伊予鉄タクシーなどしか対応していない。
さらに一部の電子マネー(2007年3月時点ではID (クレジット決済サービス)、DCMX、Edy、ICいーカード)しか利用できず、普及にはなお時間を要する。
なお、2007年3月より国際自動車・日本交通ではSuicaショッピングサービスが使える(順次導入)。
関西地区の一部ではPiTaPaを利用することが出来る。

タクシー運賃改定

営業区域内の7割以上のタクシーが値上げ申請すると国土交通省はその審議に入る。
特に東京地方では、物価安定審議会を開催し審議する。

東京地区運賃値上げ
東京地区においては、2007年12月3日に初乗り660円から710円へ運賃改定が行われた。
マスコミ報道では「値上げ」だけが強調されたが、午後11時以降に乗車する利用では反対に僅かながら値下げとなっている。
これは深夜割増の適用時間帯・割増率が「午後11時以降3割増し」から「午後10時以降2割増し」になったからである。

空港送迎タクシー

南関東、愛知県(名古屋市とその周辺部)、京阪神、中四国では自宅と空港の間で乗合タクシーサービスを行っている。
これには二種類のものがある。
一つは「自宅からある場所までは普通のタクシーで行き、そこで大型のタクシーに乗り換え、他の客と一緒に空港に行く」パターンである。
もう一つは「大型タクシーが各利用者のもとを巡回して集客後、直接空港に向かう」パターンである。
単独でタクシーに乗って空港に行くよりも安い。
また中型車もしくは小型車にて自宅より直接(もしくは遠回りしない距離の立ち寄り先を絡めて)空港に向かうパターンもある。
たいていサービス提供地域のどこから乗っても定額である。

空港連絡バス乗り場まで行く手間が省けることから、特に荷物の多い海外旅行客を中心に需要がある。
また、24時間運用の空港を深夜から早朝にかけて発着する場合、鉄道や路線バスなどの公共交通機関を利用できないことも、海外旅行客の利用を伸ばす要因となっている。
中には、マイカーを空港に置きっぱなしにできない飛行機の乗務員専用(通勤のための自宅や宿泊先と空港との送迎)のタクシー会社もある。
こちらは完全予約制で、一般の客は利用できない(むしろハイヤーに近い)。

乗務員

タクシーの乗務には第二種運転免許が必要である。
AT車にしか乗務しないのであればオートマチックトランスミッション限定の普通二種免許で乗務することもできる。
二種免許の取得資格がある者(普通第一種運転免許を3年以上取得している者)を教習生として雇い、二種免許を取得させる事業者もあるが(都内の大手タクシー会社では、グループに自動車教習所を持っている場合が多く、ここで二種免許取得のための教習が可能)、その場合数年(おおむね1~2年)の拘束期間が発生する(この期間を終える前に退職した場合、取得費用を返還しなければならないという契約で雇用されている場合が多い。ただし、法的な拘束力はない)。
さらに上に述べたタクシー事業の多角化に対応するため、入社後、ホームヘルパー、警備員検定、救命講習修了等の資格取得を求められる会社もある。

乗務員は男性が多いが、タクシー乗務員については1999年の労働基準法改正以前から女性の深夜労働(22時~5時)が認められており、女性の乗務員も少なからずいる。
しかし、一般的には昼日勤をする場合が多い。
乗務員は、一般に正社員(期限の無い雇用契約)が多く、隔日勤務の場合、月に11から13乗務行なう。
隔日勤務の場合、一回の乗務を2日分の労働と計算するので、一ヶ月に 22日から26日の勤務をすることになる。
昼日勤(朝から夕方まで)、夜日勤(夜から朝まで)を毎日乗務する勤務体系もあるが、この場合、一ヶ月に22回から26回の乗務をすることになる。
正社員は通常、このような勤務体制をとる。

定時制といわれる乗務員は、正社員ではなく、月に8乗務しかできない(昼・夜日勤の場合、16回)。
主に、高齢者や兼業者がこういった勤務をする場合が多い。

毎月の給与は固定給と歩合給が両方存在する形が多い。
したがって稼働日が多いときや売上が多いときは給与も高く、少ない時は給与が安い。
一定の運送収入に達しない場合、歩合率が下げられる場合が多い(一般的に「足切り」と呼ばれる)。
賞与は毎月の支払べき給与の中から一定の割合で控除し、賞与の時に渡すのが慣例であり、売上が少ない場合は支給されない。
歩合は運賃の50ないし60%を基本として各種条件により上下するというのが一般的である。

なお、近年の規制緩和によりタクシー台数が急増し、一部地域では過当競争が発生し、乗務員の労働環境を低下させているとの見方がある。
乗務員の平均年収は全労働者の平均年収を大きく下回っており、格差社会問題の一端が表れているとの新聞特集記事が掲載されたこともある。
タクシー運転手の求人広告は、主にスポーツ新聞や夕刊紙、公共職業安定所(ハローワーク)で行われることが多く、新聞や一般の求人情報誌、求人ウェブサイト(リクルート社のリクナビなど)にタクシー運転手の求人広告が載ることは少ない。
大都市近郊では吊り広告など電車内の広告(特に私鉄系のタクシー会社)やラジオCMで求人を募集している会社がある。

運送引受の拒絶・旅客の禁止行為

道路運送法第13条の定めるところにより、運送事業者は次の場合を除いては、運送の引受を拒絶してはならない。

(1)当該運送の申込みが認可を受けた運送約款によらないものであるとき。

一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款
「運送の引受け及び継続の拒絶」(第4条)
旅客は運転者その他の係員が運送の安全確保のために行う職務上の指示に従わなければならない。

運送に関し、申込者(旅客)から特別な負担を求められたとき
運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき
天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき
旅客が乗務員の旅客自動車運送事業運輸規則の規定に基づいて行う措置に従わないとき
旅客が旅客自動車運送事業運輸規則の規定により持込みを禁止された物品を携帯しているとき
旅客が行先を明瞭に告げられないほど又は人の助けなくしては歩行が困難ほど泥酔しているとき
旅客が車内を汚染するおそれがある不潔な服装をしているとき
旅客が付添人を伴わない重病者であるとき
旅客が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律による一類感染症、二類感染症若しくは指定感染症(入院を必要とするものに限る)の患者(これらの患者とみなされた者を含む)又は新感染症の所見のある者であるとき
禁煙車両(禁煙車である旨を表示した車両をいう)内では、旅客は喫煙を禁止する
旅客が禁煙車両内で喫煙し、又は喫煙しようとしている場合、運転者は喫煙を中止するよう求めることができる。
旅客がこの求めに応じない場合には、運送の引受または継続を拒絶できる。
(2)運送に関する設備のないとき
(6)国土交通省令の定める正当な事由のあるとき
(イ)火薬類その他の危険物を携帯している者
(カ)食事若しくは休憩のため運送の引受をすることのできない場合又は乗務の終了などのため車庫若しくは営業所に回送しようとして回送板を掲出しているとき
運送事業者は、発地及び着地のいずれもがそのタクシーの営業区域外に存する旅客の運送をしてはならない

車内への持込み禁止品
火薬類(ただし50発以内の実包及び空包であって弾帯又薬盒に挿入してあるものを除く)。

100グラムを越える玩具用煙火(花火)
揮発油、灯油、軽油、アルコール、二硫化炭素その他の引火性液体(喫煙用ライター及び懐炉(カイロ)に利用している物を除く)
100グラムを越えるフイルムその他のセルロイド類
黄燐、カーバイト、金属ナトリウムその他の発火性物質及びマグネシウム粉、過酸化水素、過酸化ソーダその他の爆発性物質
放射性物質(放射性同位元素、核燃料物質)
苛性ソーダ、硝酸、硫酸、塩酸その他の腐食性物質
高圧ガス(ただし、消火器内に封入した炭酸ガス及び医薬用酸素器に封入した酸素ガスを除く)。

クロルピクリン、メチルクロライド、液体青酸、クロロホルム、ホルマリンその他の有毒ガスを発する恐れのある物質
500グラムを越える量のマッチ
電池(乾電池を除く)
死体
動物(身体障害者補助犬、またはそれと同等の能力があると認められた犬や愛玩用の小動物を除く)

タクシーの「乗車拒否」問題
乗車拒否とは「駐停車中又は客を認めて一時停止もしくは徐行を行い、運送の申し込みを受けてから、正当な理由なくその引き受けを拒否する事」である。

バブル期において乗車拒否が多く見受けられていたが、昨今の社会状況において、乗務員が意図的に乗車拒否をすることは少なくなってきている。

また、複数車線のある道路において、第1通行帯以外を通行しているときは、たとえ客を認めて運送の申し込みを受けたとしても、安全を考慮してその引き受けを受諾してはならない。

車両

車両は排気量2リッター級のセダンがおもに使われるが、最近ではステーションワゴンやミニバンもみられる。
以前は1.5~2リッター級二輪駆動方式の市販車をベースに若干の設計変更を施した車両を使っていたが、現在ではそのクラスの市販車がFRからFFに切り替えられ、またタクシーとしての快適性の追求と合わせて、FR駆動のタクシー専用車が開発されるに至った。
軽自動車は介護用以外で使用されることは少ない。

1980年代までのタクシー車両は、燃費の関係上、AT(オートマチックトランスミッション)車よりも、MT(マニュアルトランスミッション)車が多く用いられていたが、現在では、AT車の改良により燃費も改善されMT車との格差が少なくなってきたことや、乗務員の疲労軽減等からAT車が主流になっている。

後部座席に旅客を乗せて営業するためそれ相応の安全性・乗降のスムーズさが求められることから、車両が国土交通省の道路運送車両の保安基準(以下、保安基準と略)に適合していなければ運用できないことになっている。
例えば、後部座席には必ずヘッドレストが設けられており(価格の安い自家用車には設けられていない場合が多い)、他にも前後の間隔やドアーの開口部についても、基準以上の数値を満たすことが義務付けられている。

現在、全国のタクシーのほとんどはトヨタ自動車のトヨタ・クラウンコンフォート、トヨタ・コンフォート、トヨタ・クラウンセダン、日産自動車の日産・クルー、日産・セドリックセダンのいずれかである。
このうちセドリック以外はタクシー専用車として開発された車種である。
ただ、これらの専用車は内装があまりにも安っぽいので、あえて高価なクラウンセダンやセドリックのハイグレードタクシーを選択する会社も増えてきている。

また最近は地球温暖化に対する意識の高まりを受けてハイブリッド車であるトヨタ・プリウスも使われるようになった。
しかし、2代目プリウスは1500ccエンジン搭載車であるにもかかわらず、横幅が1.7mを越えた3ナンバーになってしまい中型車として扱われるため、小型車中心の地域では初代ほど登録されていない。
また2代目プリウスは空気抵抗軽減重視ボディのため、クラウンコンフォートやクルーに比べ後席の頭上に空間の余裕が少ない。

積雪地ではFR車は走行しにくいため、FF車の市販車をベースにしたタクシーもまれに見られる(1999年までは三菱自動車の三菱・ギャランΣにFF・LPGのタクシー専用車が設定されていた。なお、現在でも北海道や東北、中国地方でごくたまに見られる)。
4WD車は燃費が悪いため、導入している会社は積雪地でも少ない。
燃料としては、税金の関係で液化石油ガスを使用する車両が多い。
LPG仕様がメーカーで設定されている車種は限られているので、ガソリンエンジンをLPGに改造するケースも個人タクシーや大都市圏のハイヤーで見られる。

LPGスタンドの設置がない地域や、タクシー事業者がガソリンスタンドも経営している場合などでは、ディーゼルエンジンの車両を使用しているところもある。
24時間営業のLPGスタンドは少ないため、閉店間際は混雑しやすい。
これを避けるべく、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを使用する個人タクシーも多い。

また、法人タクシーの多くはフェンダーミラーである。
理由として、視認時の視線移動が少量で済む事、ドアミラーと比較して車幅が狭くなるため、狭い路地に出入りし易いなどが挙げられる。
またドアミラーでは左のミラーを視認する際に運転手が客の方を向いていると誤解される場合があり、それを避ける意図もある。

タクシーは、停止や方向転換、乗客の乗降車などでのウインカーやハザードランプの点灯を周囲に認知させる必要性が高い。
東京や仙台など、地域によっては屋根の上、あんどん両脇への補助ウインカーの装備が標準化されている。

ミニバンを使用する場合は保安基準で3列目シートの乗客が避難できるように、2列目のシートはキャプテンシートの車が多く使われている。
2列目がベンチシートの車を使う場合、3列目シートを撤去し5人乗りとして用いる場合が多い。

このほか、車体にタクシー会社の名前が入っているがよく見ると白ナンバーという車両がある。
これは営業用としては引退した車両を社内教習用として使用しているものである。
ごくまれではあるが運転代行の随伴車として使用するケースもある。
この車両はメーターなどの装備品の基本操作の教習を目的に使用され、当然ながら本物の客を乗せることはできない。
こちらの車両での教習の後、本物のタクシー車両で教官役の上司と本物の客を乗せて実務教習を行う(どちらかの教習を省略する会社もある)。

車体のカラーリングは緑(東京無線など)やオレンジといった明るい色を使うところが首都圏を中心に多いが、逆に京阪神、北関東、北陸、四国のタクシーには少なく、黒や紺の割合が多い。

車内装備
車内装備
タクシーメーター
料金を表示するメーター。
実空車表示器と連動している。
深夜料金適用時間になると自動的に深夜料金に切り替わり、適用時間が終わると通常料金に戻る。
これに対し割引料金はメーター本体では計算できず、備え付けのボタンを押したり、外部ユニットとカードリーダー端末を設置して計算する場合がある。
個人タクシーにおいて、タクシー用車両を自家用車として使う場合は、「自家使用」と書かれたフードを表示機の上から被せる。
メーターは計量法により1年毎の検査(正確には有効期限が1年間の検定)を受検することが義務付けられている。
メーター内部を調整するなどの不正が行われないよう、メーターには鉛の封印(検定証印)が施される。
領収書を発行するプリンタと連動しており、支払い操作を行うと領収書が印字される。
1980年代頃までのものは、長さ20センチ程度で、先端に直径10センチ程度の「空車」文字入り円板がついたレバーを回してモードを切り替えていたが、実空車表示器と連動した電子式に切り替えられた。

(注:「タキシー」という表現がされていた時代があった(昭和初年ぐらいまで)ため、計量法に基づく解説書の中で比較的古いものにはその経緯から「タキシーメーター」との表記がなされている場合があるが、これは読み替えて差し支えない。)

実空車表示器
スーパーサイン、ウインドウサイン、またはタリフともいう。
車両の状態を表す。
かつては、タクシーメーターのレバーが上部にあれば空車と判断できたが、電子式に切り替えられたために登場。
初めて設置された頃は「空車」と「回送」しか表示しない物しかなかったが、「回送」では分かりにくいので「迎車」や「予約車」、更に最近では「賃走」、「支払」、「無線予約」などが表示できる物の搭載が義務付けられるようになってきた。
以前は電照式や幕式が多かったが、最近は発光ダイオード表示タイプの物が多く、緊急時に社名表示灯と連動して「SOS」や「助けて」と表示するものもある。

カードリーダー
クレジットカードの支払いに対応する機械。
後部左側窓ガラスに使用可能なカード会社のステッカーが貼られているので、客は乗る前に確認が必要。
搭載されていない車では当然カード払いができない。
デビットカードが使用できるものもあり、電波が届きデータの通信が可能であれば使用できる。
ただし手数料は乗務員が負担する会社があるなど、問題も多い。

速度記録計(タコグラフ)
法令によって速度記録計の設置が義務付けられている営業区域では、円盤状の紙に速度・時間・距離が記録されるタコグラフが装着されている。

形状はメーターパネル(車種によってはトランク内、ボンネット内、コンソールボックス内)に埋め込まれた錠前付きの大きなアナログ時計。
最近はメモリーカード方式(デジタル)のタコグラフを使う事業者もある。

また最近ではメーターパネル内にタコグラフ用のスペースのないハイグレード車を使用する会社が増えたことから、タクシーメーター一体型のものも増えてきている。
またグローバル・ポジショニング・システム機能により、乗下車した場所をメモリーカードに記録し、乗務員がその場で業務日報を手書きする手間を省くものもある。

社名表示灯
俗に「あんどん」。
天井灯、屋上灯、防犯灯などとも呼ばれる。
空車時は点灯して実車時は消灯する地方、夜だけ点灯する地方など、点灯方法には地域差がある。
強盗など緊急時には、赤色に点滅させることができる。
最近では社名表示灯と連動して実空車表示機に「SOS」や「助けて」と表示するものもある(街中でこのような状況を見かけた場合にはすぐに警察へ通報する事が望ましい)。
無線機器が連動して、防犯ONにすると自動的に車両の位置情報と救難信号が送信され、無線のマイクがつなぎっぱなしとなり、車内のやり取りが無線室に聞こえるシステムを採用している会社もある。
最近では広告付きのものを使用する事業者も出てきた。
形は蒲鉾型、ラグビーボール型、球型、星型、太鼓型などがある。
渦巻き型(一般にデンデン型と呼ばれる)や提灯型は個人タクシー専用となる。

オートドア
てこ式や圧縮空気などを利用して後部左ドアを運転席で操作することができる。
世界的に見てオートドアが標準になっている国は少なく、外国人客が驚くことも多い。
日本でも運転手が車の外側から開けるドアサービスを実施する会社もある。

カーナビ
最近は事業者が設置している事も多いが、乗務員が私物を取り付けている場合もある。
GPSで位置を捕捉されている場合は、無線配車で近い車から配車されるので便利ではあるが、完全に拘束されることになる。

無線
配車係が乗務員へ客のいる所へ案内するのに使用する。
屋根に無線用のアンテナを装備する。
パトカーなどのアンテナは、屋根に直接、専用の物が取り付けられているが、タクシー用は、ほぼすべて後付け(マグネット、シール貼付、雨どいにネジ締め)であり、アンテナケーブルも露出している。
周波数は400MHz帯を使用する。
配車係が最寄の車を調べるには、乗務員に無線ナンバーと現在地を報告してもらう、GPSで検索するなどがある。
乗務員同士の会話はできるものとできないものがあり、事業者の方針によって異なる。
会話できないものは、配車係(基地局)の送信周波数と乗務員(移動局)の送信周波数を変えることで実現している(一種の半複信方式)。
大都市では周波数の有効利用と安定した通信のために集中基地局方式が取られている。
この方式の場合、基地局の電波は常に送信されており、配車係がマイクの送信ボタンを離したときの「ザッ」と言う音(スケルチのテールノイズ)が聞こえないため判別可能である。
ほとんどの会社が無線営業を独自にしているが、大都市では混信を避けるため、いくつかのグループにまとまっている。
主に大都市ではタクシーが多過ぎることや、予約せずに飛び込む客や駅待ちの客がそれほど少なくないこと、乗務員のほとんどが携帯電話を持っていることなどにより、無線のない車もある。
個人タクシーではアマチュア無線を装備している人もおり(“タクシー業者でハム”という人が集まって、「無線クラブ」を作ったり、クラブの名義でアマチュア無線社団局を開設したりしている場合もある。)空車中は雑談を楽しんでいる。
しかしながら、一部にはアマチュア無線を使って業務上のものと思われる通信(道路の混雑や、客待ちの情報など)を行なう者もいる。
このことは電波法(昭和25年5月2日法律第131号)第52条の「目的外使用」にあたる違法行為であり、一般のアマチュア無線家から批判されることがある。
また、無線の使用料を乗務員から徴収する会社もある。

乗務員証・運転者証
そのタクシー会社の社員証。
東京・大阪についてはタクシーセンター発行の乗務員登録証となる。
顔写真(寸法も法令で規定がある)を貼り付けて実空車表示器の室内側表示部分に、客室に見えるように提示しなければならない。
もし写真と運転手の顔が一致しなければ、車両強奪の犯罪行為が疑われる。

ドライブレコーダー
最近装備する事業者が増えてきている。
ルームミラーに内蔵し、常に前方の状況を撮影してHDDに記録しているが、不要部分は自動的に消去されている。
予め決められた一定の条件(急ブレーキ、振動など)を感知すると、前後数秒の映像が保存される。
当初は、タクシーの事故後の解決・交渉をスムーズに進めるために導入されたが、副次的な成果として、ドライバーの運転マナーの向上やタクシーが当事者ではない事件や事故の証拠、事故原因の解析による事故予防などに活用されている。

ETC車載器
都市部を中心に、最近装備する事業者が増えている。
深夜時間帯などに高速道路を通行した場合のETC割引制度を受けられる場合が多い。
通常はタクシー会社の保有するETCカードを利用して、運賃と合わせて領収書を発行するが、利用客の保有するETCカードを利用して、通行料を支払うことができるケースもある。

その他
バッテリーケーブル(仲間がバッテリーが上がったときに救援するため)、ゴムバンド(トランクルームに蓋が閉まらなくなるほどの大きな荷物を積載したときの落下防止用)救急箱、傘(雨の日の迎車のため。宣伝になるので会社名が大きく入ったオリジナル傘をそろえている会社もある)、バケツ、消火器、毛布、洗車ブラシ(会社によっては各自で持参しなければならない)などを搭載している場合もある。

車両広告
車両は不特定多数の乗客が乗降し、一日中街中を走行しているため広告媒体としても利用されている。
タクシー広告専門の広告代理店も存在する。

車体広告
ラッピング広告
- 車体の両面ドア4枚に広告を印刷したフィルムを貼り付けるもの。

後部ドアにマグネットで広告を貼り付けるもの。

後部左側ドアのウィンドウにステッカーを貼り付けるもの。

リアウィンドウにフィルムを貼り付けるもの。
車内からは透視でき、外部からは広告面が見える。

大型の社名表示灯に商品広告が施されているもの。

ホイールに静止ホイールを取り付けるもの。

車内広告
助手席背中部分にケースを取り付け、チラシ広告をおくもの。
車中への忘れ物に備えて社名とナンバー、車番(会社での車両登録番号)が明記された名刺風カードが設置されていることもある。

液晶ディスプレイを設置し、動画広告を流していることもある。

日本のタクシーが抱える問題点
交通事故の多さ
一般車に比べ事故が非常に多い。
1台あたりの事故件数は全自動車と比べて8倍以上と極めて高い。
原因として強引な運転や、疲労運転が挙げられる(いずれも道路交通法違反)。
「1台あたりの走行距離が長いから、事故が多く見えるのは見かけ上の問題だ」との主張もあるが、走行100万キロメートルあたりの事故件数ベースで比較してもタクシーの事故率が突出している(2003年の時点では走行100万kmあたりタクシーの事故件数1.704件に対して、全自動車は1.195件)

ドライバーの賃金問題
法人タクシードライバーの賃金は累進歩合制がほとんどであり、これに対して国土交通省は変更を勧告する通達を繰り返している。
累進歩合制給与とは、売上高に応じて累進的に給与が加算される能力給制給与の一種であるが、ベースとなる固定給が極めて低いのがタクシー業界の一般的特徴である。
これと近年の規制緩和でタクシー台数が増やされたことをあわせると、限られたパイを取り合う構図になり、満足な収入を得られるのは一部の優れたドライバーに限られ、ほとんどのドライバーは極めて少ない収入となる。
(矢貫隆が『カーグラフィック』誌に2006年12月号より連載している「京都・タクシードライバー日記」によると、例えば1ヶ月毎日12時間以上働いても売上高が30万円、賃金が手取り8万円というような状態が珍しくないという。)

この問題に関連して、大阪府内の法人タクシーの運転手4人が、規制緩和による過度な増車等によって収入が低下し、労働条件の悪化と交通事故の増加を招いたなどとして、増車・運賃値下げの許認可取り消しと、1人当たり約50万円の損害賠償を国に対し求める訴訟を、2005年10月に大阪地方裁判所に起こしたが、同地裁は2009年3月25日に、「規制緩和があったからといって、供給過多や極端な運転手の給与水準の低下があったとは認められない」として、訴えを棄却した。

[English Translation]