不退寺 (Futai-ji Temple)

不退寺(ふたいじ)は、奈良市法蓮町にある真言律宗の寺院。
本尊は聖観音(業平観音とも呼ばれる)。
山号は金龍山。
寺号は詳しくは不退転法輪寺と称する。

概要
仁明天皇の勅願を受け、在原業平が開基したとの由緒から「業平寺」とも呼ばれる。

奈良市街北部に位置し、南方を関西本線が斜めによぎる。
境内には四季折々、レンギョウ、ツバキ、カキツバタ、キクなどが咲き乱れ、晩秋にはカエデ、ナンテンなどが見られる。

歴史
寺伝によれば、大同 (日本)4年(809年)、平城天皇が譲位してのち隠棲し「萱の御所」と称したのが始まりとされる。
その後平城天皇の皇子である阿保親王、更に阿保親王の5男である在原業平が暮らしたという。
伊勢神宮参詣時に受けた神勅を機に、業平が自ら聖観音像を刻み、「不退転法輪寺」と号して阿保親王の菩提を弔った。
これが寺院としての始まりと伝えられている。

寺の近辺からは平安時代前期の古瓦が出土しており、創建がその頃までさかのぼることは認められる。
だが、中世以前の沿革はあまり明らかでない。

境内
南門-鎌倉時代末期、正和6年(1317年)の建立で、切妻造・本瓦葺。
冠木上には笈形調の装飾が見られる。
1934年(昭和9年)の修理時、多くの墨書銘が確認された。

本堂-室町時代前期の建立。
寄棟造・本瓦葺。
鎌倉時代に入ってから一般化した、正面中央に虹梁を配する様式の初見例とされる。

多宝塔-鎌倉時代のもの。
「大和名所図絵」によれば、寛政年間には檜皮葺きの上層部があったが、明治に入ってからの廃仏毀釈の中で取り払われた。
現在は第一層のみが残っている。

文化財
重要文化財
南門
本堂
多宝塔
木造聖観世音菩薩立像-寺伝に在原業平の作という。
しかし様式的には平安時代中期、11世紀頃の作と思われる。
一木彫で、胡粉地に極彩装飾を施す。
本堂安置。

木造五大明王像-平安時代中期作。
本堂安置。

舎利厨子-奈良国立博物館に寄託。
厨子内に安置されていた五輪塔形舎利容器は1952年に盗難に遭って行方不明である。

その他
阿保親王坐像-奈良県指定文化財。
鎌倉時代作。

石棺-5世紀のもの。
ウワナベ古墳付近にて発掘されたもの。
庫裏北側に置かれている。

アクセス

JR関西本線奈良駅・近鉄奈良駅より奈良交通バス(西大寺駅・航空自衛隊行き)乗車。
「一条高校前(不退寺口)」下車、徒歩7分

近畿日本鉄道大和西大寺駅より奈良交通バス(JR奈良駅・白土町行き)乗車。
「不退寺口」下車、徒歩7分

拝観は午前9時~午後5時、拝観料は大人・中・高生500円、小学生300円。

[English Translation]